世界の常識、日本の非常識 腸チフス

腸チフスを知っていますか?

みなさん、腸チフスをご存知でしょうか。日本ではほとんど話題に上がることがない病気ですが、欧米の旅行者がアジアに旅をする際には必ず予防のためのワクチンを接種することが常識となっている、旅先で注意すべき代表的な感染症の一つです。

腸チフスとは、サルモネラ菌によって引き起こされる消化器系の感染症であり、主に発展途上国で流行している病気です。
感染すると、高熱、腹痛、下痢、嘔吐などの症状が現れ、病気が進行すると重篤な合併症を引き起こすこともあります。
腸チフスは、適切な治療を受けない場合、死亡することもあるため、早期の発見と治療が重要となります。またワクチンによる予防が可能な感染症です。

腸チフスの流行地域

腸チフスは、主にアジア、アフリカ、中南米などの発展途上国で流行しています。特に衛生面が十分でない地域や、飲料水が不衛生な地域では、腸チフスのリスクが高くなります。日本では、腸チフスの発生率は極めて低いため、腸チフスに感染する可能性は非常に低いと言えます。

腸チフスの感染経路

腸チフスは、主に感染者の糞便から排泄されたサルモネラ菌が、不衛生な飲料水や食品を介して口から摂取されることで感染します。また、腸チフスは、直接的な接触や、感染した人物から感染源への汚染を介して、人から人へと感染が広がることもあります。

腸チフスの症状

腸チフスに感染すると、高熱、頭痛、腹痛、吐き気、下痢、食欲不振などの初期症状が現れます。病気が進行すると、高熱、意識障害、虚弱感、徐脈などの症状が現れ、合併症を引き起こすこともあります。腸チフスは、早期に治療を行わない場合、約10%の人が合併症を発症し、場合によっては死亡することもあります。

腸チフスの治療方法

腸チフスは、サルモネラ菌によって引き起こされる感染症であり、早期の治療が重要とされています。腸チフスの治療方法には、以下のような方法があります。

抗生物質の投与
腸チフスの治療には、抗生物質の投与が必要です。一般的には、アジスロマイシン、セフトリアキソン、クロラムフェニコールなどの抗生物質が使用されます。これらの抗生物質は、サルモネラ菌を殺菌することができ、症状の改善につながります。

輸液療法について
腸チフスにかかると、高熱、脱水症状などが現れるため、輸液療法が必要になる場合があります。輸液療法は、体内の水分や電解質を補充するために行われます。

サポート療法について
腸チフスにかかると、高熱や脱水症状などの症状が現れるため、これらの症状を緩和するためにサポート療法が行われることがあります。例えば、解熱剤や鎮痛剤、嘔吐や下痢を抑える薬などが使用されます。

腸チフスの治療期間

腸チフスの治療期間は、通常7日間以上かかることがあります。
治療が早期に始まれば、症状は比較的早く改善することができますが、治療を受けずに放置すると、症状が悪化し、重篤な合併症を引き起こすことがあります。そのため、早期の診断と治療が重要とされています。

腸チフスの予防とワクチン

腸チフスは、適切な衛生管理や予防策がとられない場合、感染するリスクが高まります。そこで、腸チフスを予防するためには、適切な衛生管理を行うことが大切です。しかしながら、現地での衛生状況に依存するため、感染を完全に防ぐことは困難な場合があります。そのため、腸チフス予防のためには、腸チフスワクチンの接種が推奨されます。

腸チフスワクチンは不活化した菌を用いたワクチンであり、一回の接種で効果(95%以上の抗体獲得率)があるため、旅行前に接種することができます。
腸チフスワクチンの副作用としては、接種部位の痛みや発赤、腫れ、発熱、頭痛、吐き気、腹痛などがあります。しかしながら、これらの副作用は、軽度で一過性であり、一般的には問題ありません。また、腸チフスワクチンの接種には、旅行前に1~2週間程度の余裕を持って接種することが望ましいとされています。

腸チフス流行地での注意事項

腸チフスは、発展途上国を中心に流行している感染症です。流行地に滞在する際には、以下のような注意事項が必要です。

水の摂取に注意しよう
腸チフスは、不衛生な水から感染することが多いため、水の摂取には特に注意が必要です。水道水は安全ではないため、ボトル入りの水を使用するか、沸騰させた水を使用することをおすすめします。また、飲み物に氷を入れないようにし、シャワーを浴びる際には、口を開けないように注意することも大切です。

食品の摂取に注意しよう
現地で提供される食品の中には、不十分な調理や不衛生な保存状態で提供されるものがあるため、摂取には注意が必要です。特に、生野菜や果物を摂取する際には、よく洗ってから食べるようにし、生卵を使用した食品や、未加熱の肉類を摂取しないようにしましょう。また、市場で買い物をする場合は、新鮮な食品を選ぶようにし、食品が保管されている環境にも注意を払いましょう。

衛生面に注意しよう
現地での生活において、十分な衛生管理が行われていない場合があります。そのため、手洗いやうがいを徹底することが必要です。トイレには、ペーパータオルや携帯用の除菌ジェルを持参するようにしましょう。また、部屋の換気を良くすることで、部屋の中にウイルスや細菌が蔓延することを防ぐことができます。

内藤 祥
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職

 

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