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【医師監修】ALT・ASTが高いと言われたら。まずやるべきこと3選

内藤Dr.
ALT・ASTの結果
【医師監修】ALT・ASTが高いと言われたら。まずやるべきこと3選

健康診断の結果を見て、「ALTとASTが高い」と指摘され、不安を感じていらっしゃるかもしれませんね。働き盛りの40代で、仕事や家庭の責任も大きい中で、ご自身の体のこととなると「このままで大丈夫なのだろうか」「何か大きな病気が隠れているのでは」と心配になるのは当然のことです。専門用語が多くてよくわからない、インターネット上にはさまざまな情報があり、どれを信じて良いか判断に迷うという声もよく耳にします。

この記事では、そのようなあなたの不安を解消し、具体的な行動へと移すための道筋を、専門医の監修のもとで明確に提示します。なぜALTやASTの数値が高くなるのか、放置することにはどのようなリスクがあるのかを分かりやすく解説し、そして今すぐにあなたが何をすべきか、具体的で実践的な3つのステップに沿ってお伝えします。この記事を読み終える頃には、漠然とした不安が解消され、ご自身の健康を守るための明確な一歩を踏み出せるよう、心を込めて情報をお届けします。

健康診断でALT・ASTが高い…これって大丈夫?

健康診断の結果で、見慣れない「ALT」「AST」といった項目に高い数値が記されているのを見て、少なからず不安を感じられたかもしれません。「このままで大丈夫なのだろうか」「何か大きな病気だったらどうしよう」といった心配は、多くの方が抱える共通の感情です。しかし、まずは落ち着いてください。この数値は、あなたの体からの重要なサインであり、決して見過ごしてはいけない大切なメッセージなのです。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、多少のダメージがあっても自覚症状が出にくいという特性があります。そのため、多くの場合、健康診断の血液検査で初めて異常が発見されることがほとんどです。自覚症状がないからといって、決して安心できるわけではありません。むしろ、健診の数値は、体の内側で起こっている変化を知るための、貴重な手がかりとなります。このサインに早く気づき、適切に対応することで、将来の大きな病気を未然に防げる可能性が高まります。

数値が高い状態を放置すると、肝硬変や肝がんといった深刻な病気へと進行するリスクも考えられます。ですが、ご安心ください。多くの場合、早期に原因を特定し、適切な対策を講じることで、数値の改善が見込めます。この記事が、あなたの不安を解消し、前向きな行動へとつながる第一歩となることを願っています。

そもそもALT(GPT)・AST(GOT)とは?肝臓からのSOSサイン

健康診断の結果で目にする「ALT」や「AST」という項目は、肝臓の状態を示す重要な指標です。これらの数値がなぜ大切なのか、そしてなぜ「肝臓からのSOSサイン」と言われるのかについてご説明します。ALTとASTは、肝臓の細胞の中に多く存在する「酵素」の一種です。酵素とは、体の中でさまざまな化学反応を助ける役割を持つタンパク質で、消化や代謝など、生命活動に欠かせない働きをしています。

通常、肝臓の細胞はきちんと活動していますが、何らかの原因で肝臓の細胞がダメージを受けたり、壊れたりすると、その細胞内にあったALTやASTといった酵素が血液中に漏れ出してしまいます。このため、血液検査でこれらの数値が高く検出されると、それは「肝臓の細胞が傷ついていますよ」という、体からの重要なメッセージ、つまりSOSサインだと考えられるのです。数値が高い場合は、肝臓に何らかの異常が起きている可能性を示唆します。

ALTとASTの役割と違い

ALT(GPT)とAST(GOT)はどちらも肝臓の異常を示す酵素ですが、それぞれに異なる特徴と役割があります。ALTは主に肝臓の細胞に多く含まれており、肝臓に特異性の高い指標とされています。そのため、ALTの値が高い場合は、肝臓に何らかのダメージがある可能性が非常に高いと考えられます。

一方、ASTは肝臓だけでなく、心臓の筋肉(心筋)や骨格筋、腎臓など、他の臓器の細胞にも含まれています。このため、ASTの数値が高い場合でも、必ずしも肝臓が原因とは限りません。例えば、激しい運動によって筋肉がダメージを受けた場合や、心筋梗塞など心臓に異常がある場合にもASTは上昇することがあります。

臨床の現場では、ALTとASTの単独の数値だけでなく、その比率も重要な判断材料となります。例えば、ALTよりもASTが優位に高い場合は、アルコール性肝炎や急性肝炎、肝硬変などが疑われることがあります。反対に、ASTよりもALTが優位に高い場合は、脂肪肝や慢性肝炎の可能性が考えられます。このように、両者の数値のバランスを見ることで、医師はある程度、肝臓の異常の原因を推測し、次の検査や診断につなげていくのです。

なぜ数値が上昇するのか?肝細胞のダメージを示す指標

ALTやASTの数値が上昇する根本的な理由は、肝臓の細胞が何らかの原因で傷つき、その細胞の中にある酵素が血液中に流れ出してしまうためです。肝臓は体にとって非常に重要な臓器ですが、過剰なアルコールの摂取、肝臓への脂肪の蓄積(脂肪肝)、ウイルス感染(ウイルス性肝炎)、そして一部の薬剤やサプリメントなどが、肝細胞に炎症を引き起こしたり、細胞を破壊したりする原因となります。

これらの原因によって肝細胞がダメージを受けると、細胞膜が傷つき、内部に閉じ込められていたALTやASTが血液中へと漏れ出します。その結果、血液検査で測定されるこれらの酵素の血中濃度が上昇として現れるのです。つまり、ALTやASTの数値の上昇は、あくまで肝臓がダメージを受けている「結果」であり、その「結果」の裏には必ず何らかの「原因」が隠されています。健康診断で数値の異常を指摘された場合、この原因を特定し、適切な対策を講じることが非常に重要になります。

基準値はどれくらい?数値の見方のポイント

ALTとASTの一般的な基準値は、どちらも「30 IU/L以下」とされることが多いです。しかし、この基準値は、検査を行う医療機関や検査機器、測定方法によって異なる場合があります。そのため、ご自身の健康診断の結果を受け取ったら、必ず結果表に記載されている各検査項目ごとの基準値を確認することが大切です。

「基準値を少し超えただけだから大丈夫だろう」と自己判断してしまうのは大変危険です。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期の段階では自覚症状がほとんど現れません。数値の異常は、体が発している重要なサインであり、これを放置すると病気が進行してしまう可能性があります。数値の絶対値だけでなく、過去の健康診断の数値と比較してどの程度変動しているか、また、γ-GTP(ガンマジーティーピー)やALP、ビリルビンといった他の肝機能検査の項目と合わせて総合的に評価することが重要です。

ご自身で判断せずに、必ず専門の医師に相談し、適切な診断とアドバイスを受けるようにしてください。基準値を超える異常が見られた場合は、その原因を突き止めるための追加検査が必要となることがほとんどです。

ALT・ASTが高くなる主な原因は?

健康診断でALT・ASTが高いと指摘されたとき、多くの方は「これは一体何が原因なのだろう?」と疑問に感じるのではないでしょうか。数値が示すのはあくまで肝臓からのSOSサインであり、その裏には様々な原因が隠されています。特に働き盛りの皆さんに多いのは「脂肪肝」や「アルコール性肝障害」ですが、他にも見過ごせない「ウイルス性肝炎」や「薬剤性肝障害」なども存在します。

原因は一つとは限らず、複合的な場合もあります。これからご紹介する主な原因をセルフチェックの材料として読み進めていただき、ご自身の生活と照らし合わせてみてください。原因のあたりをつけることは、次に取るべき行動を明確にする第一歩となります。

生活習慣が関係する「脂肪肝」

近年、ALT・AST上昇の原因として最も多く見られるのが「脂肪肝」です。特に「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれるタイプの脂肪肝は、アルコールの摂取とは関係なく、食べ過ぎや運動不足といった生活習慣によって肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。

「残業が多くて、ついつい夜食を食べてしまう」「会議続きで運動する時間が取れない」といった多忙なビジネスパーソンの方々は、まさに脂肪肝に陥りやすい状況にあると言えます。ラーメンや丼物などの高カロリー食、お菓子や清涼飲料水に含まれる糖質の過剰摂取、そしてデスクワーク中心の生活は、知らず知らずのうちに肝臓に負担をかけている可能性があります。もし、「自分も当てはまるかもしれない」と感じたら、それは肝臓からの重要なメッセージです。

脂肪肝は放置すると、肝臓に炎症が起こる「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」へと進行し、さらに肝硬変や肝がんへと発展するリスクがあるため、決して軽視できません。しかし、朗報なのは、生活習慣の改善によって脂肪肝は改善が見込める病気だということです。食生活を見直し、適度な運動を取り入れることで、肝臓の健康を取り戻すことが十分に可能です。前向きな行動が、ご自身の未来を守ることに繋がります。

お酒の飲み過ぎによる「アルコール性肝障害」

お酒を日常的に飲まれる方にとって、ALT・ASTの上昇は「アルコール性肝障害」の可能性を示唆しているかもしれません。アルコールは肝臓で分解・代謝されますが、その過程で生成されるアセトアルデヒドなどの物質が肝細胞を直接傷つけ、炎症や機能障害を引き起こします。これがアルコール性肝障害の発症メカニズムです。

「飲み過ぎは良くない」とは頭では分かっていても、仕事の付き合いやストレス解消のために、ついつい飲酒量が増えてしまうこともあるでしょう。しかし、肝臓の健康を考える上で、自身の飲酒習慣を客観的に見つめ直すことは非常に重要です。厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」として、1日あたりの純アルコール摂取量を約20g程度(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)を推奨しています。これを超えて日常的に飲酒している場合は、肝臓に大きな負担をかけている可能性があります。

アルコール性肝障害の場合、ASTがALTよりも高く出やすいという特徴があります。これは、アルコールが肝細胞のミトコンドリアにダメージを与え、ミトコンドリアに多く存在するASTが血液中に漏れ出しやすくなるためと考えられています。ご自身の飲酒量や、ASTとALTの数値バランスを確認し、心当たりがあれば早めに医師へ相談することが大切です。

感染症である「ウイルス性肝炎」

ALT・ASTの上昇は、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスへの感染による「ウイルス性肝炎」が原因である可能性もあります。これらのウイルスは、感染しても自覚症状がないまま長期間にわたって肝臓に炎症を引き起こし続け、知らず知らずのうちに慢性肝炎、肝硬変、そして肝がんへと進行する主要な原因となるため、注意が必要です。

「もしかしたら自分も感染しているかもしれない」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ウイルス性肝炎の早期発見は、肝臓を守る上で極めて重要です。健康診断の血液検査でALT・ASTの異常が指摘された際には、必ず肝炎ウイルス検査を受けるようにしてください。

近年では、ウイルス性肝炎に対する治療は飛躍的に進歩しており、特にC型肝炎では内服薬による治療で、高率にウイルスを排除できるようになりました。B型肝炎についても、ウイルスの活動を抑える効果的な治療薬が登場しています。検査を受けることは、不安を解消し、もし感染が判明しても適切な治療によって健康な生活を取り戻すための第一歩となるでしょう。

薬やサプリメントが原因の「薬剤性肝障害」

意外に思われるかもしれませんが、医師から処方される医療用医薬品だけでなく、市販の風邪薬、痛み止め、漢方薬、さらには健康食品やサプリメントが原因で肝機能障害が起こることがあります。これを「薬剤性肝障害」と呼びます。

「健康のために良かれと思って飲んでいるサプリメントが、肝臓に負担をかけていた」というケースも少なくありません。特に、複数の薬やサプリメントを併用している場合、肝臓での代謝経路が重複したり、特定の成分が肝臓に過度な負担をかけたりすることで、ALT・ASTの数値が上昇することがあります。

もし、ALT・ASTの高値を指摘されたら、現在服用・摂取している全ての薬(処方薬、市販薬、漢方薬)やサプリメント、健康食品を一度リストアップしてみてください。そして、医療機関を受診する際には、このリストを忘れずに医師に伝えることが非常に重要です。医師が原因を特定し、適切な診断を下す上で、服用・摂取している全ての情報が手がかりとなります。自己判断で中止せず、必ず医師に相談するようにしましょう。

その他(激しい運動、自己免疫性肝炎など)

上記以外にも、ALT・ASTが上昇する原因はいくつか存在します。例えば、健康診断の数日前に普段しないような激しい筋力トレーニングやマラソンなどの運動を行った場合、筋肉の細胞が一時的にダメージを受け、ASTの数値が上昇することがあります。ASTは肝臓だけでなく、心筋や骨格筋にも多く含まれる酵素であるため、このようなケースでは肝臓に問題がないにもかかわらず、高値を示すことがあります。

もし、健康診断前に激しい運動をした心当たりがある場合は、その旨を医師に伝えることで、不必要な心配や検査を避けることができるかもしれません。

また、頻度は低いものの、自身の免疫システムが誤って肝臓を攻撃してしまう「自己免疫性肝炎」のような病気や、甲状腺機能亢進症など肝臓以外の病気が原因でALT・ASTが高くなることもあります。これらの疾患は専門的な検査を必要とするため、自己判断せずに医療機関を受診し、専門医による鑑別診断を受けることが重要です。

【結論】ALT・ASTが高いと言われたら。まずやるべきこと3選

健康診断でALT・ASTの数値が高いと指摘され、漠然とした不安を抱えながらインターネットで情報を探し続けていませんか。もう、その不安な日々は終わりにしましょう。この数値を放置することは、将来的に肝硬変や肝がんといった深刻な病気へと繋がるリスクがあります。しかし、ご安心ください。適切な知識と行動があれば、健康を取り戻すことは十分に可能です。

この記事では、専門医の監修のもと、ALT・ASTが高いと指摘された方が今すぐ取り組むべき具体的な3つのステップを提示します。それは、「①原因のあたりをつけるセルフチェック」「②専門の医療機関の受診」「③再検査までにできる生活改善」です。これらのステップは、多忙な40代のビジネスパーソンであるあなたが、限られた時間の中で最も効率的に不安を解消し、健康を取り戻すための確実な道筋となるでしょう。具体的な行動を通じて、漠然とした不安を具体的な解決策へと転換し、ご自身と大切なご家族のために、ぜひ前向きな一歩を踏み出してください。

1. まずはセルフチェック!原因のあたりをつける

健康診断でALTやASTの数値が高いと指摘され、不安を感じていることと思います。まずは医療機関を受診することが最も大切ですが、受診までの間や、医師とのスムーズなコミュニケーションのために、ご自身の生活習慣や状況を振り返ってみることをおすすめします。このセルフチェックは、自己診断を下すためのものではなく、医師に正確な情報を伝え、より的確な診断や治療方針につなげるための準備です。ご自身の状態を客観的に把握することで、漠然とした不安の整理にもつながります。これからご紹介する具体的なチェック項目を通して、ご自身の健康状態を改めて見つめ直してみましょう。

お酒の量や頻度を見直す

まずは、ご自身の飲酒習慣について具体的に振り返ってみましょう。「週に何日お酒を飲みますか?」「1日に飲むお酒の種類と量はおおよそどれくらいですか?」といった問いかけを、紙やスマートフォンのメモに書き出してみてください。例えば、ビールは500ml缶で何本、日本酒は1合で何杯、焼酎やウイスキーはどの程度か、といったように数値で把握することが重要です。また、「休肝日は週に何日ありますか?」という点も確認しましょう。漠然とした「飲み過ぎ」という感覚ではなく、客観的なデータとしてご自身の飲酒量を把握することで、医師への説明もスムーズになりますし、今後の生活改善にも役立ちます。

食生活(脂質・糖質の過剰摂取)を振り返る

次に、日頃の食生活について考えてみましょう。「揚げ物やラーメン、ファストフードなど脂っこい食事を食べる頻度はどれくらいですか?」「甘いお菓子やジュース、清涼飲料水をよく摂取しますか?」「仕事で帰りが遅くなり、夕食の時間が夜遅くなりがちではありませんか?」「食事の際、早食いやドカ食いをしてしまう習慣はありませんか?」といった点に心当たりはありませんか。これらの食習慣は、肝臓に中性脂肪が蓄積する脂肪肝の原因となる可能性があります。毎日完璧な食生活を送ることは難しいかもしれませんが、まずはご自身の食習慣の傾向を把握することが大切です。

最近、激しい運動をしなかったか?

健康診断の血液検査を受ける数日前から前日にかけて、普段はあまり行わないような激しい運動、例えばハードな筋力トレーニングや長時間にわたるマラソンなどをしましたか?もし心当たりがある場合、筋肉の細胞が一時的にダメージを受け、そこに含まれるASTという酵素が血液中に流れ出し、数値が一時的に上昇することがあります。肝臓に異常がないにもかかわらず、こうした運動が原因で数値が高く出ている可能性も否定できません。もしそのような事実があれば、受診時に医師に伝えることで、不要な心配や検査を避けることにつながるかもしれません。

服用中の薬や健康食品・サプリメントを確認する

現在、内服している医薬品や摂取している健康食品、サプリメントをすべて確認してください。医師から処方された薬はもちろん、薬局で購入した市販薬(風邪薬、痛み止めなど)、漢方薬、さらにはプロテイン、ビタミン剤、ダイエットサプリメント、青汁など、口にするものすべてが対象です。これらの中には、肝臓に負担をかける成分が含まれていたり、体質によって肝機能に影響を与えたりする可能性のあるものがあります。お薬手帳を活用したり、サプリメントのパッケージなどを確認したりして、漏れなくリストアップし、受診時に医師に提示できるように準備しておきましょう。これにより、薬剤性肝障害の可能性を検討する上で非常に重要な情報となります。

2. 放置は危険!必ず専門の医療機関を受診する

健康診断で「ALT・ASTが高い」と指摘され、不安を抱えながらも「忙しくて病院に行く時間がない」「もし重い病気だったらと考えると怖い」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論からお伝えしますと、肝機能の異常は決して放置してはいけません。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなりのダメージを受けても自覚症状が出にくい特性があります。そのため、健康診断の数値は、自覚症状が現れる前に体のSOSサインをキャッチできる貴重な情報なのです。

この数値の異常を放置すると、最終的には肝硬変や肝がんといった命に関わる重篤な病気に進行するリスクがあります。早期に原因を特定し、適切な対策を講じることができれば、多くの場合、肝臓の健康を取り戻すことが可能です。不安な気持ちを抱え続けるよりも、専門家である医師に相談し、原因を突き止めて解決策を見つける方が、結果的に時間的・精神的・経済的な負担を最小限に抑えることにつながります。ご自身の健康、そして大切なご家族のためにも、このサインを見過ごさず、勇気を出して一歩を踏み出しましょう。

なぜ再検査・精密検査が必要なのか?

医療機関を受診して再検査や精密検査を受ける目的は、主に二つあります。一つは、一度の健康診断で出たALT・ASTの数値が一時的な上昇によるものではなく、継続的に高い状態にあるのかを確認するためです。例えば、健診の直前に激しい運動をした場合など、一時的に数値が上昇することもあります。そのため、一定期間をおいて再度検査し、数値の変動を確認することが重要です。

もう一つは、数値が上昇している根本的な原因を特定するためです。ALT・ASTが高いという結果は、あくまで肝臓が何らかのダメージを受けている「結果」を示しているに過ぎません。そのダメージの原因が、脂肪肝、アルコール性肝障害、ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害など、どれであるのかを精密検査によって突き止める必要があります。原因が明確にならなければ、適切な治療や生活習慣の改善策を立てることはできません。不安を解消し、次の一歩を踏み出すためには、精密検査による原因究明が不可欠なプロセスとなります。

何科を受診すればいい?(内科・消化器内科・肝臓内科)

ALT・ASTの高値を指摘された際に、何科を受診すればよいか迷う方もいらっしゃるかもしれません。まずは、健康診断を受けた医療機関か、普段から通われている「かかりつけの内科」に相談するのが第一歩です。かかりつけ医は、あなたのこれまでの健康状態や既往歴を把握しているため、初診でもスムーズに相談できるでしょう。

より専門的な診断や治療が必要と判断された場合は、「消化器内科」への受診を勧められることが一般的です。消化器内科は、食道から胃、腸、そして肝臓、胆道、膵臓といった消化器全般の疾患を専門としています。さらに、肝臓疾患に特化した専門医がいる「肝臓内科」や「肝臓専門医」がいる医療機関もあります。これらの専門医は、肝臓の病気に関する深い知識と経験を持っているため、複雑なケースや高度な治療が必要な場合には非常に頼りになります。まずは内科を受診し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのが最も確実な方法と言えるでしょう。

クリニックで行う主な検査(血液検査・腹部エコー)

実際に医療機関を受診した後、どのような検査が行われるのかをご説明します。まず中心となるのは、健康診断よりもさらに詳細な項目を調べるための「血液検査」です。ここでは、ALTやASTだけでなく、γ-GTP、ALP、ビリルビンなどの他の肝機能指標、肝炎ウイルスの有無を調べるマーカー、さらには糖尿病や脂質異常症など、肝機能に影響を与える可能性のある他の疾患の指標も詳しくチェックします。

もう一つ重要な検査が「腹部超音波(エコー)検査」です。これは、超音波を使って肝臓の様子を画像で確認する検査で、痛みもなく、放射線被ばくの心配もないため安心して受けられます。腹部エコーでは、肝臓の大きさや形、表面の状態、脂肪の蓄積具合(脂肪肝の程度)、腫瘍や結石の有無などを視覚的に確認できます。これらの検査を組み合わせることで、ALT・AST上昇の原因を多角的に調べ、正確な診断につなげていくことができます。

受診時に持っていくとスムーズなもの

医療機関での診察をよりスムーズかつ有意義にするために、いくつか準備しておくと良いものがあります。まず最も重要なのは、今回の「健康診断の結果票」です。医師がALT・ASTの数値や他の検査項目を正確に把握するために不可欠な情報ですので、忘れずに持参しましょう。

次に、「お薬手帳」と「現在服用・摂取しているサプリメントや健康食品のリスト」です。処方薬はもちろん、市販薬、漢方薬、プロテイン、ビタミン剤など、口にしているものは全て医師に伝えることが重要です。薬剤性肝障害の可能性を探る上で非常に重要な情報となります。そして、ステップ1でご自身で行った「セルフチェックのメモ」も持参すると良いでしょう。飲酒量や食生活の具体的な内容、最近の運動歴などをまとめておくことで、医師への情報伝達が円滑になり、より的確な診断へとつながります。

3. 再検査までの期間にできる生活習慣の改善

医療機関の予約が取れるまでの間や、精密検査の結果を待つ間にも、ご自身の肝臓をいたわるためにすぐに始められることがあります。これは本格的な「治療」というよりも、肝臓への負担を一時的に軽減するための「応急処置」だと考えてください。大切なのは、ここで自己判断して医療機関への受診をやめないことです。「何もしないで結果を待つ」よりも、「できることから始める」という前向きな姿勢は、検査結果に対する不安の軽減にもつながります。ここでは、食事、運動、飲酒の3つの観点から、明日から実践できる具体的な行動目標をご紹介します。

これらの改善は、肝臓への負担を減らし、数値の改善に貢献する可能性があります。忙しい日々の中でも取り入れやすい内容に絞りましたので、ぜひ今日からできることから始めてみてください。完璧を目指すよりも、まずは継続することに重点を置きましょう。

食事:バランスを意識し、食べ過ぎを避ける

食事面での改善は、ALT・ASTの数値が高い原因の一つである脂肪肝対策として非常に重要です。しかし、いきなり厳しい食事制限をする必要はありません。まずは「バランスの取れた食事」と「食べ過ぎない」ことを意識することから始めましょう。具体的には、主食(ごはん、パン、麺)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品)、副菜(野菜、きのこ、海藻)がそろった食事を心がけてください。特に、揚げ物やラーメン、菓子パン、甘いジュースなど、脂質や糖質が多い食品の摂取を少し控えるだけでも肝臓への負担は大きく変わります。

また、野菜やきのこ、海藻類は食物繊維が豊富で満腹感を得やすく、食べ過ぎ防止にも役立ちます。忙しいとつい夜遅くに食事を摂ってしまいがちですが、肝臓への負担を考えると、できるだけ就寝の2〜3時間前には食事を済ませるのが理想的です。早食いやドカ食いの習慣がある方は、一口ずつよく噛んでゆっくり食べることを意識するだけでも、消化器への負担が軽減されます。完璧を目指すのではなく、「今日から一つだけ変えてみる」という意識で取り組んでみてください。

運動:無理のない範囲で有酸素運動を取り入れる

運動不足は脂肪肝の大きな原因の一つです。しかし、忙しい方がいきなりジムに通い始めたり、ハードなトレーニングをしたりするのは難しいかもしれません。まずは、無理なく続けられる「有酸素運動」を日常生活に取り入れることから始めましょう。ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳などが有酸素運動にあたります。

具体的な目標としては、「週に2〜3回、1回30分程度」を目標にしてみてください。例えば、通勤時に一駅手前で降りて歩く、エレベーターではなく階段を使う、休日に家族と少し長めに散歩するなど、日常生活の中で意識的に体を動かす工夫をするだけでも運動量は増えます。運動はストレス解消にもつながり、精神的な健康にも良い影響を与えます。継続することが大切ですので、ご自身が「これならできそうだ」と思えることから始めて、少しずつ運動習慣を身につけていきましょう。

飲酒:休肝日を設け、適量を守る

アルコールは肝臓で分解されるため、飲酒量が多いと肝臓に大きな負担がかかります。ALT・ASTの数値が高い原因がアルコール性肝障害である可能性も十分に考えられますので、飲酒習慣の見直しは非常に重要です。

最も理想的なのは、原因が特定され、医師から指示があるまで一時的に「禁酒」することです。しかし、それが難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、まず「週に2日以上の休肝日を設ける」ことから始めてみてください。また、1日に飲むお酒の量を減らすことも大切です。厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」の目安として、1日平均純アルコールで20g程度(ビール中瓶1本、日本酒1合、ワイン2杯弱に相当)を推奨しています。ご自身の飲酒習慣を客観的に振り返り、この目安を参考にしながら、少しずつ飲酒量を減らしていく努力をしてみましょう。肝臓は回復力のある臓器ですので、飲酒習慣を見直すことで数値の改善が期待できます。

こんな症状があったらすぐに病院へ

健康診断でALTやASTの異常値を指摘され、精密検査の予約をしている間や結果を待っている間に、次のような症状が現れた場合は、通常の受診予約を待たずにすぐに医療機関を受診してください。これらの症状は、肝臓の機能が急激に悪化している「レッドフラッグサイン」であり、一刻を争う事態である可能性があります。

具体的には、「体がだるくて起き上がれないほどの強い倦怠感」や「皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)」、「原因不明の発熱」、「右上腹部に強い痛みを感じる」といった症状が挙げられます。特に黄疸は、肝臓が血液中のビリルビンという色素を処理しきれずに、それが全身に回ってしまうことで起こるため、肝機能が著しく低下している危険なサインです。これらの症状は、夜間や休日であっても救急外来などを受診し、速やかに専門医の診察を受ける必要があります。自己判断で様子を見たり、市販薬で対処しようとしたりすることは絶対に避け、早急な医療機関への受診を強くおすすめします。

医療機関での精密検査と診断後の流れ

健康診断でALTやASTの異常値を指摘され、「この先どうなるのだろう」と不安を感じる方は少なくありません。しかし、医療機関を受診すれば、初診から精密検査、診断確定、そして適切な治療開始まで、一連のプロセスを経て原因が特定され、明確な治療方針が立てられます。先の見えない不安を抱え続けるよりも、専門家と一緒に原因を突き止め、具体的な解決策に進むことは、精神的な負担を軽減し、最終的に健康を取り戻すための最も確実なステップとなるでしょう。

受診は単に検査を受けるだけでなく、ご自身の体の状態を正確に把握し、不安を解消するための重要なプロセスです。医師との対話を通じて、これまでの生活習慣や気になっている症状を伝え、ご自身の健康状態を深く理解する良い機会でもあります。原因が特定できれば、それに応じた治療計画が立てられ、漠然とした不安から解放され、前向きに健康改善に取り組めるようになります。

血液検査でわかること(肝炎ウイルスの有無など)

精密検査としての血液検査では、ALTやASTの数値変動だけでなく、肝機能全体の状態を詳細に把握するためのさまざまな項目が調べられます。例えば、γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー)やALP(アルカリホスファターゼ)といった、ALT・ASTとは異なる種類の肝酵素の値を測定することで、肝臓のどの部分に異常があるのか、また胆道系の異常が関与していないかなどを評価できます。さらに、ビリルビン値を確認することで、黄疸の有無や肝臓の解毒機能の状態を知ることができます。

特に重要なのは、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染の有無を調べるためのマーカー検査です。これらは、自覚症状がないまま慢性肝炎へと進行し、肝硬変や肝がんの原因となることがあるため、早期発見が非常に重要です。また、ご自身の免疫が肝臓を攻撃してしまう自己免疫性肝炎が疑われる場合には、自己抗体の検査も行われます。これらの多角的な血液検査によって、ALT・AST上昇の背景にある具体的な原因を特定し、適切な治療へと繋げるための重要な手がかりが得られるのです。

腹部エコー検査で肝臓や胆のうの状態を確認

血液検査に加えて、腹部超音波(エコー)検査は、肝臓やその周辺臓器の具体的な状態を視覚的に確認するための非常に重要な検査です。この検査は、放射線被ばくの心配がなく、痛みもほとんどないため、安心して受けていただけます。エコー検査では、肝臓の内部の「輝度(白っぽさ)」を詳しく観察します。これにより、肝臓にどれくらいの脂肪が蓄積しているか、つまり脂肪肝の程度を評価することができます。肝臓の輝度が高ければ高いほど、脂肪の蓄積が進んでいる可能性を示唆しています。

また、エコー検査は肝臓の形や表面の状態も確認できます。例えば、肝臓の表面がゴツゴツしていたり、萎縮が見られたりする場合には、肝硬変の進行が疑われます。さらに、肝臓がんなどの腫瘍がないか、胆のうに胆石やポリープがないかといった構造的な異常も発見することができます。このように、腹部エコー検査は血液検査だけではわからない、肝臓そのものの物理的な変化や異常を捉え、診断の精度を大きく高める上で不可欠な検査と言えるでしょう。

原因別の治療アプローチ(脂肪肝、ウイルス性肝炎など)

ALTやASTの上昇の原因が特定されれば、それに応じた具体的な治療アプローチが確立されます。例えば、生活習慣の乱れが主な原因である「脂肪肝」や「アルコール性肝障害」の場合、治療の主体となるのは、やはり生活習慣の改善です。食事内容の見直し、適度な運動の継続、そして飲酒量の制限や禁酒が中心となります。これは薬物療法に頼るのではなく、ご自身の力で肝臓を健康な状態に戻すための、最も効果的で根本的な治療と言えます。

一方、B型やC型などの「ウイルス性肝炎」が原因の場合には、抗ウイルス薬を用いた薬物治療が中心となります。近年では非常に効果的な治療薬が登場しており、ウイルスを排除したり、活動を抑制したりすることで、肝炎の進行を食い止め、肝硬変や肝がんへの移行リスクを大幅に低減できるようになっています。

また、意外と見過ごされがちな「薬剤性肝障害」の場合、治療の第一歩は原因となっている薬剤やサプリメントの中止です。これにより、肝臓への負担が取り除かれ、多くの場合、肝機能は速やかに回復に向かいます。このように、原因が明確になれば、それに特化した治療計画が立てられ、先の見えない不安から解放され、具体的なステップを踏み出せるようになるのです。

まとめ:ALT・AST高値は体からの重要なサイン。専門医に相談しましょう

健康診断でALTやASTの数値が高いと指摘されたら、それは自覚症状の出にくい「沈黙の臓器」である肝臓からの重要なSOSサインです。不安な気持ちのまま、インターネットで情報を探し続けるのは、時間と精神力の消耗につながりかねません。これまでの内容でご紹介した「①原因のあたりをつけるセルフチェック」「②専門医の受診」「③再検査までにできる生活改善」という3つのステップこそが、あなたの不安を解消し、健康を取り戻すための最も確実で効率的な道筋です。

「仕事が忙しい」「家族に心配をかけたくない」といったお気持ちはよくわかります。しかし、肝機能の異常を放置することは、将来的に肝硬変や肝がんといった深刻な病気に進行するリスクを高めてしまいます。早期に原因を特定し、適切な対策を講じることこそが、結果的に時間的・経済的な負担を最小限に抑え、あなた自身と大切なご家族の笑顔を守ることにつながります。

ぜひ、この記事で得た知識を活かし、前向きな一歩を踏み出してください。専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることで、あなたはきっと健康な未来へと進むことができます。あなたの健康は、あなただけでなく、ご家族にとっても何より大切なものです。勇気を出して、医療機関の扉を叩きましょう。

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健康診断でALT・ASTが高いと指摘されたら、自己判断で様子を見ずに一度ご相談ください。当院では総合内科で脂肪肝・アルコール性肝障害・ウイルス性肝炎などのご相談を承っており、血液検査は院内で実施しています。健康診断の結果票をお持ちのうえ、お気軽にお越しください。

執筆者

医療法人社団クリノヴェイション理事長

内藤 祥

Naito Sho

経歴

北里大学医学部卒
沖縄県立中部病院で救急医療、総合診療をトレーニング
沖縄県立西表西部診療所で離島医療を実践
専門は総合診療

資格

日本プライマリ・ケア連合会認定 家庭医療専門医・指導医
日本内科学会 認定医
日本医師会 認定産業医
日本旅行医学会 認定医
日本渡航医学会 専門医療職