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帯状疱疹ワクチンは打つべき?50歳からの後悔しない選択肢を医師が解説

内藤Dr.
腕の痛みや違和感を気にする女性

50歳を過ぎたら、誰もが帯状疱疹のリスクと無縁ではありません。実は、80歳までに3人に1人が発症すると言われるほど身近な病気なのです。突然、体の片側に現れる耐え難い痛みは、日常生活を大きく阻害し、さらに恐ろしいのは、その痛みが皮膚症状が治まった後も数ヶ月から数年にわたって続く「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という後遺症に悩まされるリスクがあることです。

このような事態を避けるために、今、予防策として注目されているのが帯状疱疹ワクチンです。この記事では、現役の医師の視点から、帯状疱疹ワクチンの種類、それぞれの効果や副反応、気になる費用や利用できる助成制度に至るまで、皆さんが疑問に感じるであろう点を網羅的に解説します。

はじめに:50歳を過ぎたら他人事ではない帯状疱疹とその予防

帯状疱疹は、50歳を過ぎた多くの方々にとって決して他人事ではない、身近な健康課題です。統計によると、80歳までに実に3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われており、その発症リスクは年齢とともに急増します。この病気は、単なる皮膚のトラブルに留まらず、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。例えば、趣味のガーデニングや旅行を断念せざるを得なくなったり、大切な孫との触れ合いをためらったり、あるいは仕事に集中できず支障をきたすケースも少なくありません。帯状疱疹は、私たちの「生活の質(QOL)」を著しく低下させる可能性のある病気なのです。

確かに、帯状疱疹には抗ウイルス薬による治療法が存在します。しかし、一度発症してしまえば、激しい痛みや水ぶくれに苦しみ、完全に症状が治まるまでには時間がかかります。そして何よりも、厄介なのが「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼ばれる後遺症に移行するリスクです。PHNは、皮膚症状が消えた後も長期間にわたって痛みが続くため、患者さんの心身に大きな負担を与え続けます。

このようなリスクを回避する上で、最も賢明な選択となるのが「予防」という考え方です。帯状疱疹にかかってから治療を考えるのではなく、そもそも発症そのものや重症化を防ぐことで、痛みや後遺症に苦しむ可能性を大きく減らすことができます。その有効な手段として、今、帯状疱疹ワクチンが注目されています。

そもそも「帯状疱疹」とはどんな病気?

帯状疱疹ワクチンについて理解を深めるためには、まず「帯状疱疹」という病気そのものについて、基本的な知識を整理することが重要です。このセクションでは、帯状疱疹がどのような症状を引き起こし、なぜ発症するのかといった基礎的な情報をご説明します。病気について正しく知ることで、ワクチン接種の意義や必要性をより深く理解していただけるでしょう。

突然の激しい痛みが特徴

帯状疱疹の最も特徴的な症状は、突然現れる激しい痛みです。発症の初期段階では、体の片側の皮膚に「ピリピリ」「チクチク」とした違和感や痒みが現れることが多く、風邪や疲労からくるものだと見過ごされがちです。しかし、その後数日から1週間程度で、その違和感があった部分に「焼けるような」「電気が走るような」と表現される耐え難い痛みが襲いかかります。この痛みは、発疹が現れるよりも前に始まることが多いため、他の病気と間違われることも少なくありません。

痛みが強くなると同時に、体の片側の神経に沿って帯状に赤い発疹が現れ、数日後には小さな水ぶくれが形成されます。この水ぶくれは破れてかさぶたになり、通常は2〜4週間で治癒に向かいます。顔面や頭部に発症すると、目や耳に合併症を引き起こし、視力低下や難聴、顔面神経麻痺につながる可能性もあるため、特に注意が必要です。

原因は子供の頃に感染した「水ぼうそう」のウイルス

帯状疱疹の原因は、「水痘・帯状疱疹ウイルス」というウイルスです。このウイルスは、ほとんどの方が子供の頃にかかる「水ぼうそう」を引き起こすウイルスと全く同じものです。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内から完全に消え去るわけではなく、神経の根元にある「神経節」という場所に潜伏し続けます。

この潜伏しているウイルスは、普段は免疫力によって活動を抑えられていますが、加齢、ストレス、過労、病気などで体の免疫力が低下した際に再び活性化します。活性化したウイルスは神経に沿って移動し、皮膚に到達して帯状疱疹として発症するのです。そのため、過去に水ぼうそうにかかったことがある人であれば、誰でも帯状疱疹を発症する可能性があると言えます。

最も怖いのは「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という後遺症

帯状疱疹の合併症の中で、最も患者さんの生活の質(QOL)を著しく低下させるのが、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」です。PHNとは、帯状疱疹による皮膚の発疹やかさぶたが治った後も、数ヶ月から長い場合には数年にわたって痛みが持続する状態を指します。この痛みは、チクチク、ピリピリといった軽いものから、「焼けるような」「電気が走るような」といった激しい痛みまで様々です。

PHNの痛みは非常に辛く、「服が擦れるだけで痛い」「風が当たるだけで痛い」といった症状で、日常生活に大きな支障をきたします。例えば、着替えや入浴が困難になったり、夜も眠れなくなったりすることで、精神的な負担も大きくなります。特に高齢者の方ほどPHNへ移行するリスクが高く、一度PHNになると痛みの治療が難しくなるケースも少なくありません。ワクチン接種は、単に帯状疱疹の発症を防ぐだけでなく、この辛い後遺症であるPHNを避けるための、非常に重要な手段であることをぜひご理解いただきたいです。

【結論】医師の視点から:50歳以上の帯状疱疹ワクチン接種を強く推奨する理由

結論として、50歳を過ぎたら帯状疱疹ワクチンの接種を強く推奨いたします。この病気は、80歳までに実に3人に1人が発症すると言われており、決して他人事ではありません。加齢とともに免疫力が低下すると、帯状疱疹を発症するリスクは高まり、症状も重症化しやすくなる傾向にあります。

帯状疱疹の最も恐ろしい合併症の一つに、帯状疱疹後神経痛(PHN)があります。これは、皮膚の症状が治まった後も、焼けるような、あるいは電気が走るような痛みが数ヶ月から数年にわたって続く状態で、日常生活の質を著しく低下させます。服が擦れるだけでも激痛が走るなど、患者さんにとっては耐え難い苦痛を伴い、仕事や趣味、そして大切な人との時間をも奪ってしまう可能性があります。

しかし、現在の帯状疱疹ワクチンは、この発症と重症化を高い確率で予防できる、非常に有効な手段です。特に不活化ワクチン「シングリックス」は、50歳以上で90%以上の高い予防効果が示されており、PHNへの移行リスクも大幅に低減できます。ワクチン接種は、単に一時的な痛みから身を守るだけでなく、将来にわたって健康で活動的な生活を送るための「未来への投資」と言えるでしょう。ぜひ、ご自身の健康と安心な生活のために、積極的にワクチン接種をご検討ください。

帯状疱疹ワクチンの種類を徹底比較!どちらを打つべき?

日本で接種できる帯状疱疹ワクチンには、「不活化ワクチン(シングリックス)」と「生ワクチン(弱毒性水痘ワクチン)」の2種類があります。しかし、これら2つのワクチンは、効果の高さ、持続期間、接種回数、費用、そして副反応の出方など、さまざまな点で大きく異なります。情報が多岐にわたるため、ご自身にとって最適な選択肢がどれなのか、多くの方が迷われていることでしょう。このセクションでは、それぞれのワクチンの特徴を分かりやすく解説し、ご自身の健康状態やライフスタイル、価値観に合った「後悔しない選択」をするための具体的な判断材料を提供します。

2つのワクチンの違いが一目でわかる比較表

不活化ワクチン「シングリックス」と生ワクチン「弱毒性水痘ワクチン」の主な違いをまとめた比較表を以下に示します。この表をご覧いただくことで、それぞれのワクチンの特徴が直感的に理解でき、ご自身の優先順位(高い予防効果、費用、接種の手軽さ、安全性など)と照らし合わせながら、どちらのワクチンがより適しているかを検討しやすくなります。

組換えワクチン
「シングリックス」
生ワクチン
「乾燥弱毒生水痘ワクチン」
対象年齢50歳以上50歳以上
接種回数2回(筋肉内)1回(皮下)
接種スケジュール1回目から2か月後(遅くとも6か月後まで)に2回目1回で完了
発症予防効果90%以上(50歳以上で97.2%、70歳以上で90.0%)50〜60%
PHN予防効果約85〜90%約60%
効果の持続期間10年以上約5年
当院の料金24,500円(税込26,950円)/回
2回で49,000円(税込53,900円)
11,500円(税込12,650円)
主な副反応接種部位の痛み・腫れ・赤み、倦怠感、筋肉痛、頭痛、発熱など接種部位の痛み・腫れ、発熱など(頻度は比較的低い)
接種できない人免疫機能が低下している方、妊娠中の方など

※料金は当院の任意接種(自費)の価格です。定期接種の対象となる場合は自治体が定める自己負担額となります。

不活化ワクチン「シングリックス®」の特徴

不活化ワクチン「シングリックス」は、比較的新しいタイプの帯状疱疹ワクチンです。非常に高い予防効果が期待できる一方で、接種回数や費用、副反応の点で知っておくべき特徴があります。ここからは、シングリックスの具体的なメリットと注意点について詳しく見ていきましょう。

高い予防効果と長期の持続性

シングリックスの最大の特長は、その卓越した帯状疱疹発症予防効果にあります。臨床試験では、50歳以上の方で97.2%、そして70歳以上の方でも90%以上という非常に高い予防効果が確認されています。これにより、帯状疱疹そのものを高い確率で防ぐことが期待できます。

さらに、帯状疱疹の最もやっかいな合併症である帯状疱疹後神経痛(PHN)の発症も、約85%〜90%という高い確率で抑制できることが示されています。つまり、シングリックスは単に帯状疱疹の発症を防ぐだけでなく、発症してしまった場合の重症化や、その後の長引く痛みに苦しむリスクも大きく軽減してくれるのです。

もう一つの重要なポイントは、効果の長期的な持続性です。接種後10年が経過しても、80%以上の高い有効率が維持されるというデータがあり、一度接種を完了すれば、長期にわたって帯状疱疹への不安から解放される「長期的な安心」を提供できる点が、シングリックスの大きな魅力と言えるでしょう。

接種回数とスケジュール

シングリックスの接種は、原則として「筋肉内に2回」必要です。1回目の接種を受けた後、通常は2ヶ月後に2回目の接種を行います。ただし、遅くとも1回目の接種から6ヶ月後までには2回目の接種を完了させることが重要です。この2回の接種をしっかりと完了することで、長期にわたる高い予防効果を最大限に得ることができます。

注意すべき副反応

シングリックスは高い予防効果が期待できる一方で、副反応が比較的高い頻度で現れる傾向があります。接種部位の痛み、腫れ、赤みといった局所的な副反応は、多くの方に起こる可能性があり、注射後しばらく続くことがあります。また、全身性の副反応として、倦怠感、筋肉痛、頭痛、発熱なども報告されています。

接種前に予定を確認しておく

これらの副反応の多くは通常2〜3日程度で自然に軽快する一時的なものですが、接種翌日は無理な予定を入れず、ゆっくり体を休められるようにしておくと安心です。とくに2回目の接種後は症状が出やすい傾向があります。

症状が長引いたり、強く感じられたりする場合には医療機関にご相談ください。

生ワクチン「弱毒性水痘ワクチン」の特徴

生ワクチンである「弱毒性水痘ワクチン」は、水痘(水ぼうそう)の予防にも使われてきた、より伝統的なワクチンです。このワクチンは、シングリックスとは異なる特徴を持ち、その効果や接種方法、副反応について理解しておくことが重要です。

シングリックスとの効果の違い

生ワクチンの帯状疱疹発症予防効果は、約50%〜60%とされています。これは、シングリックスが示す90%以上という非常に高い効果と比較すると、相対的に低い数値となります。完全に発症を防ぎたいという場合には、シングリックスの方が優れていると言えるでしょう。

また、効果の持続期間にも違いがあります。生ワクチンの場合、接種後約5年程度で効果が徐々に低下していくという研究結果が報告されており、長期的な予防効果を期待する場合には、シングリックスの方が有利です。これらの効果の違いを踏まえ、ご自身のニーズに合った選択をすることが大切になります。

接種回数とスケジュール

生ワクチンの大きな利点の一つは、接種回数の少なさです。このワクチンは「皮下に1回の接種」で完了します。シングリックスが2回の接種を必要とするのに対し、生ワクチンは1回の通院で済むため、通院の負担を減らしたい方や、短期間で接種を終えたい方にとっては魅力的な選択肢となります。

副反応と接種できない人

生ワクチンの副反応は、シングリックスと比較して接種部位の痛みや全身性の症状の頻度が低い傾向にあります。ただし、生ワクチンにはウイルスを弱毒化して作られているという性質上、接種できない方がいます。

生ワクチンを接種できない方
  • 免疫抑制剤や抗がん剤を使用中の方
  • 未治療のHIV感染症など、免疫機能が低下している方
  • 妊娠中の方

これらに当てはまる方は、組換えワクチン「シングリックス」が選択肢となります。ご自身の健康状態や服用中のお薬について、必ず事前に医師にお伝えください。

これは安全に関わる極めて重要な情報ですので、ご自身の健康状態や服用している薬剤について、必ず事前に医師に伝えて相談するようにしてください。安全にワクチン接種を受けるためにも、この点は特に注意が必要です。

結局、どちらのワクチンを選べばいいの?目的別の選び方

帯状疱疹ワクチンには、不活化ワクチン「シングリックス」と生ワクチンという2つの選択肢がありますが、「どちらが絶対的に優れている」というものではありません。それぞれのワクチンが持つ「予防効果」「費用」「接種回数」「安全性」という特性を理解し、ご自身の価値観や健康状態に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。このセクションを参考に、「自分なら何を優先するか?」を考えながら、今後の選択にお役立てください。

予防効果を最優先したい方

「とにかく帯状疱疹の発症も、その後遺症である帯状疱疹後神経痛(PHN)も避けたい」と、予防効果を最も重視される方には、不活化ワクチン「シングリックス」を強くおすすめします。シングリックスは臨床試験において90%以上という非常に高い発症予防効果が確認されており、さらにその効果は接種後10年経過しても80%以上の高い有効率を維持すると報告されています。

費用が比較的高く、接種時に一時的な副反応が出やすいという側面はありますが、長期にわたる確実な予防効果を求める方にとっては、将来の健康と安心な生活への投資として、費用や副反応の負担を上回る価値があると考えられます。「将来の安心を確実なものにしたい」という強いニーズに応える、最も有効な選択肢と言えるでしょう。

費用や接種回数を抑えたい方

ワクチン接種にかかる経済的な負担をできるだけ抑えたい方や、複数回の通院の手間を避けたい方には、生ワクチンが選択肢となります。生ワクチンは1回の接種で完了するため、通院回数を少なくしたい方や、短期間で接種を終えたい方にとって魅力的な選択肢です。

また、費用もシングリックスと比較すると安価であるため、全体の自己負担額を抑えることができます。ただし、生ワクチンの発症予防効果は約50%〜60%であり、効果の持続期間もシングリックスより短いことを理解しておく必要があります。費用対効果を考慮した上で、一定の予防効果を期待しつつ、経済的なメリットを優先する方には良い選択となるでしょう。

免疫機能に不安がある方

特定の持病を抱えていたり、免疫抑制剤を服用していたりするなど、免疫機能に懸念がある方にとって、ワクチンの選択は安全性の観点から非常に重要です。このようなケースでは、ウイルスを弱毒化して作られている生ワクチンを接種することはできません。免疫機能が低下している方に生ワクチンを接種すると、体内でウイルスが増殖し、病気を発症するリスクがあるためです。

そのため、免疫機能に不安がある方にとっては、ウイルスの成分の一部だけを使って作られている不活化ワクチン「シングリックス」が唯一の選択肢となります。シングリックスは免疫機能が低下している方にも比較的安全に接種できるとされており、医師との綿密な相談のもとで接種の可否を判断することが不可欠です。ご自身の健康状態や服用している薬剤がある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

帯状疱疹ワクチンの費用と助成金制度について

帯状疱疹ワクチン接種を検討されている方にとって、費用の問題は大きな関心事の一つではないでしょうか。帯状疱疹ワクチンには健康保険が適用されません。定期接種の対象年齢に該当する方はお住まいの自治体が定める自己負担額で接種できますが、対象外の方は任意接種として全額自己負担となります。

このセクションでは、当院での接種費用と、2025年度から始まった定期接種制度、そしてお住まいの自治体が独自に行っている助成制度の調べ方について解説します。ご自身がどの制度を使えるのかを確認した上で、接種を検討してみてください。

当院での帯状疱疹ワクチンの費用

定期接種の対象外の方が接種を受ける場合は、任意接種(自費)となります。任意接種の料金は医療機関ごとに設定が異なりますので、当院の料金を以下にご案内します。

組換えワクチン「シングリックス」は、当院では1回あたり24,500円(税込26,950円)です。2回の接種が必要となるため、総額は49,000円(税込53,900円)となります。

生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン)は、当院では11,500円(税込12,650円)です。1回の接種で完了するため、シングリックスと比べて総額は抑えられます。

お住まいの自治体の助成制度を確認しよう

帯状疱疹ワクチンの費用負担を軽減するために、ぜひ活用したいのがお住まいの自治体が実施している助成制度です。多くの市区町村で独自の助成事業を展開していますが、対象となる方の年齢、助成額、申請方法などは自治体によって大きく異なります。

具体的な助成制度の有無や内容については、まずご自身で情報を確認することが重要です。最も簡単な方法は、インターネット検索で「お住まいの自治体名 + 帯状疱疹ワクチン 助成」といったキーワードで検索することです。例えば、「〇〇市 帯状疱疹ワクチン 助成」と入力して調べてみてください。自治体の公式ウェブサイトに詳細情報が掲載されていることが多いです。

また、自治体の広報誌や、保健所、役所の健康福祉担当窓口に問い合わせるのも確実な方法です。かかりつけ医にご相談いただければ、地域の助成制度について教えてもらえる場合もありますので、まずは身近な医療機関に相談してみるのも良いでしょう。助成制度を賢く利用して、経済的な負担を軽減しながら帯状疱疹予防を進めましょう。

2025年度から始まった帯状疱疹ワクチンの定期接種

帯状疱疹ワクチンは、2025年度(令和7年度)から予防接種法に基づく定期接種(B類疾病)の対象になりました。対象となる方は、お住まいの自治体が定める自己負担額で接種を受けられます。

定期接種の対象は、その年度に65歳になる方です。あわせて2025年度から2029年度までの5年間は経過措置として、その年度内に70歳・75歳・80歳・85歳・90歳・95歳・100歳になる方も対象となります。また、60歳から64歳でヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に重い障害がある方も対象です。使用できるワクチンは生ワクチン(皮下に1回)と組換えワクチン(2か月以上の間隔をあけて2回、筋肉内)の両方で、どちらを選ぶかは相談のうえ決められます。

実施期間や自己負担額は自治体によって異なります。対象者や制度の詳細は、厚生労働省の「帯状疱疹ワクチン」のページ、および自治体から届く案内でご確認ください。定期接種の対象年齢に該当する年度を過ぎると自費での接種となりますので、該当する年度のうちに接種を検討されることをおすすめします。

帯状疱疹ワクチンの接種の流れと注意点

実際に帯状疱疹ワクチンの接種を検討されている方が、スムーズに医療機関を受診し、安心して接種を受けられるよう、このセクションでは一連の流れと知っておくべき注意点を解説します。具体的には、どのような方が接種の対象となるのか、どこで接種を受けられるのか、そして他のワクチンとの接種間隔など、大切な情報をご紹介します。

接種対象者について

帯状疱疹ワクチンを接種できるのは、原則として「50歳以上」の方です。加齢とともに免疫力が低下するため、50歳を過ぎると帯状疱疹の発症リスクが高まると考えられています。なお、公費助成のある定期接種の対象は65歳になる年度の方などに限られ、それ以外の年齢の方は任意接種(自費)となります。

また、過去に一度帯状疱疹にかかったことがある方でも、再発を予防するためにワクチン接種が推奨されるケースが多くあります。帯状疱疹は一度かかっても免疫が一生続くわけではなく、再発する可能性もあるため、予防のためにワクチンを接種することは有効な選択肢です。

最終的な接種の可否は、お一人お一人の健康状態、持病、服用されているお薬などを考慮し、医師と十分に相談した上で判断することが非常に重要です。必ずかかりつけ医や医療機関の医師にご相談ください。

接種が受けられる医療機関

帯状疱疹ワクチンの接種は、主に内科、皮膚科、そして一部の総合病院で受けることができます。しかし、全ての医療機関で帯状疱疹ワクチンを常備しているわけではありませんので、接種を希望される場合は、必ず事前に医療機関へ確認の連絡を入れるようにしてください。

電話で問い合わせる際は、「帯状疱疹ワクチンの接種を希望している」旨を伝え、ご希望のワクチンの種類(シングリックスか生ワクチンか)があるか、予約が必要かどうかなどを確認することをおすすめします。特にシングリックスは費用が高額であり、在庫を抱えている医療機関が限られる場合もあるため、事前の確認は欠かせません。

まずは普段からお世話になっているかかりつけ医に相談するのが、ご自身の健康状態を理解してくれているため、最もスムーズな方法と言えるでしょう。

他のワクチンとの接種間隔

安全にワクチン接種を行うためには、他のワクチンとの接種間隔に注意が必要です。特に、多くの方が接種経験を持つ新型コロナウイルスワクチンとの接種間隔については、互いに2週間以上の間隔をあける必要があります。これは、異なる種類のワクチンを短期間に接種することで、免疫反応に影響が出たり、副反応が強く出たりする可能性を避けるためです。

帯状疱疹ワクチンが不活化ワクチン(シングリックス)の場合、他の不活化ワクチンとの間隔に明確な規定はありません。例えば、インフルエンザワクチンなど他の不活化ワクチンとは同時に接種することも可能ですが、医師の判断によります。

一方で、生ワクチン(弱毒性水痘ワクチン)の場合は注意が必要です。生ワクチンは体内でウイルスを増殖させて免疫を促すため、次に別の注射生ワクチンを接種するまでには27日以上の間隔をあける必要があります。これは、生ワクチン同士の干渉を防ぎ、それぞれのワクチンの効果を最大限に引き出すための重要なルールです。

いずれのケースでも、他のワクチン接種の予定がある場合や、直近で他のワクチンを接種した場合は、必ず医師にその旨を伝えて指示を仰ぐようにしてください。

よくある質問(Q&A)

ここでは、帯状疱疹ワクチンに関してよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。

過去に帯状疱疹にかかったことがあっても、ワクチンは必要ですか?

はい、過去に帯状疱疹にかかったことがある方でも、ワクチンの接種は推奨されます。帯状疱疹は一度発症しても再発する可能性があり、自然感染によって得られる免疫は時間とともに徐々に低下していきます。そのため、ワクチン接種によって改めて免疫を強化することで、再発のリスクを下げることが期待できるのです。

ただし、帯状疱疹発症の急性期にワクチンを接種することはできません。症状が治まってから、いつ頃接種するのが適切か、かかりつけ医とよく相談して時期を決めることが大切です。

ワクチンの副反応が心配です。どんな症状が出ますか?

帯状疱疹ワクチンの副反応は、多くの人が最も心配される点の一つですね。不活化ワクチンであるシングリックスでは、接種部位の痛み、腫れ、赤みといった局所的な反応が高頻度でみられます。また、全身性の反応として倦怠感、筋肉痛、頭痛、発熱などを感じる方もいらっしゃいます。一方、生ワクチンではこれらの副反応の頻度はシングリックスと比較すると低い傾向にあります。

重要なのは、これらの副反応の多くは、体がワクチンに対して免疫をつけようと反応している証拠であり、一時的なものであるという点です。多くの場合、2〜3日程度で自然に軽快しますので、過度に心配する必要はありません。接種後は無理をせず、ゆっくり過ごすように心がけましょう。

接種後に健康被害が起きた場合の補償はありますか?

万が一、ワクチン接種後に重篤な健康被害が生じた場合でも、国による救済制度が用意されていますのでご安心ください。現在の帯状疱疹ワクチンは「任意接種」として扱われているため、「医薬品副作用被害救済制度」の対象となります。これは、医薬品の副作用による健康被害を救済するための公的な制度です。

将来的に帯状疱疹ワクチンが「定期接種」に位置づけられた場合は、「予防接種健康被害救済制度」という別の制度の対象となります。定期接種の救済制度は、任意接種の制度よりも手厚い補償が受けられる可能性があります。どちらの制度も、国が国民の健康を守るために設けている大切な仕組みですので、いざという時のセーフティネットがあることを知っておいていただければと思います。

まとめ:後悔しないために。かかりつけ医と相談してワクチン接種を検討しましょう

ここまで、帯状疱疹ワクチンについて詳しく解説してまいりました。帯状疱疹は、50歳を過ぎると誰にでも発症する可能性のある、決して他人事ではない病気です。発症すると、衣服が擦れるだけで激痛が走ったり、風が当たるだけでも痛むといった耐え難い痛みに見舞われ、場合によっては「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という、数ヶ月から数年続く辛い後遺症に悩まされるリスクもあります。

しかし、ご安心ください。現在、日本で接種可能な帯状疱疹ワクチンは「シングリックス」と「弱毒性水痘ワクチン」の2種類があり、これらを接種することで、発症そのものを防いだり、たとえ発症しても症状を軽くし、特に厄介なPHNへの移行を大幅に減らすことができます。効果は高いものの費用も高額なシングリックス、費用は抑えられるものの効果が限定的な生ワクチンという特徴があるため、ご自身のライフスタイルや健康状態に合わせて選ぶことが大切です。

この記事を通じて得られた情報を参考に、ぜひ一度、かかりつけ医に相談してみてください。ご自身の状況や不安な点、ワクチンの費用や副反応について正直に話し、医師とともに「自分にとって後悔のない選択」をすることが、未来の健康と安心な生活を守る第一歩となります。痛みや後遺症に悩まされることなく、趣味や旅行、そしてご家族との時間を心ゆくまで楽しむために、今こそ、帯状疱疹ワクチン接種を前向きに検討しましょう。

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どちらのワクチンを選ぶか、定期接種の対象になるかは、年齢や健康状態、ご使用中のお薬によって変わります。判断に迷われる場合は無理に自己判断せず、医療機関へご相談ください。当院でも帯状疱疹ワクチンの接種を行っておりますので、お気軽にご相談ください。

執筆者

医療法人社団クリノヴェイション理事長

内藤 祥

Naito Sho

経歴

北里大学医学部卒
沖縄県立中部病院で救急医療、総合診療をトレーニング
沖縄県立西表西部診療所で離島医療を実践
専門は総合診療

資格

日本プライマリ・ケア連合会認定 家庭医療専門医・指導医
日本内科学会 認定医
日本医師会 認定産業医
日本旅行医学会 認定医
日本渡航医学会 専門医療職