プラセンタについて詳しく解説します

近年、「プラセンタ」という言葉をテレビやネット、ドラッグストア、雑誌、医療機関でもよく目や耳にすることが増え、身近に感じるようになりました。
そこで今回はプラセンタについて、少し詳しくお伝えしたいと思います。

プラセンタって?

プラセンタ(Placenta) とは「胎盤」のことです。
母体の子宮の中に着床した目にも見えない小さな受精卵を、人間だとわずか10ヵ月で約3kgもの赤ちゃんにまで育て上げる「驚異の臓器」です。しかし出産と同時に母体と外へ排出される「臨時の臓器」でもあります。
胎盤の働きはホルモンや生理活性物質、各種の成長因子などを胎児に供給し、毒物や異物の侵入から胎児を守る免疫機能も果たすと言われています。

ここではヒトのプラセンタについて解説します。

歴史

人々が古くから胎盤に注目したのは、草食・肉食動物を問わず出産後の動物たちが胎盤を食べてしまうのを見て、その有効性に気づいたのではないかと考えられています。

中国では、4000年前からヒトの胎盤を産後の回復や滋養強壮・末期の蘇生薬(紫河車:しかしゃ)を使っており、江戸時代の日本にも影響を与えたそうです。
ヨーロッパでも紀元前4世紀に「医学の父」と呼ばれるヒポクラテスが胎盤の利用について書き残しています。
クレオパトラや楊貴妃、マリー・アントワネットが美容目的で使用した、始皇帝が不老不死を求めて使った、と言われていることは有名な話ですね。

近世では、1920年頃に旧ソ連で埋没療法(プラセンタを体に埋め込む)が「傷の治癒に胎盤を使うと高い治療効果がある」ことが提唱されました。
日本では1945年に軍がプラセンタを使った栄養剤の製造を依頼したところで終戦となりましたが、1955年に「ビタエックス®」として発売された経緯があります。
1990年代には化粧品や育毛剤にも配合されていましたが、2003年の法改正で、ヒトの組織が使われている全ての商品記録を保管しなければならなくなったため、今では診療以外で使用されるプラセンタは家畜(ウマ・ウシ・ブタ・ヒツジなど)や植物などになっています。

注射薬では1956年にメルスモン、1959年にラエンネックが承認され、今では多くの医療機関で取り扱われています。

有効性

よく「更年期障害にプラセンタが効く」と耳にすると思いますが、日本産婦人科学会は「プラセンタは標準の治療であるホルモン補充療法の代用とはならない」としていますが、徐々に研究が進み、閉経期評価尺度や疲労重症度が改善された、というデータも出てきています。
単一の薬理学的な詳細は解明されていませんが、早くから①抗酸化作用、②抗炎症作用、③抗老化作用があることはなんとなくわかっていました。それに加え、近年④遺伝子修復作用(放射線障害の回復)もあることが明らかにされました。(20日以内に死亡する大量の放射線を浴びたマウスがプラセンタ注射で200日も健常な状態で生きられたという論文も発表されています。Mochizuki H, Kada T. Restorative effects of human placenta extract in X-ray-irradiated mice. J Radiat Res. 1982 Sep;23(3):403-10)
現在、考えられている有効性をまとめると

  • 自律神経調整作用(自律神経のバランスを整える)
  • 強肝・解毒作用(肝臓の働きを高める)
  • 基礎代謝向上作用(基礎代謝・新陳代謝を高めて細胞や組織を活性化させる)
  • 免疫賦活作用(免疫力を強化して抵抗力を高める)
  • 抗炎症作用(炎症を抑え、壊れた組織を修復する)
  • 内分泌調整作用(内分泌系のバランスを整える)
  • 活性酸素除去作用(細胞を壊す活性酸素を除去して酸化を防ぐ)
  • 血行促進・造血作用(造血組織を刺激して血流を良くする)

などが考えられています。
プラセンタと聞くと女性のイメージが強いかもしれませんが、性別問わず利用者が増えているのは、このような効果が明らかになってきているからでしょう。

疾患別効能は以下の表をご参照ください。

プラセンタの効果が期待できる疾患一覧(例)

期待される主な作用
内科

慢性疲労症候群,胃弱,胃炎,胃潰瘍,食欲不振,片頭痛,高血圧症,C型慢性肝炎,アルコール性肝炎,肝硬変,気管支喘息,食道静脈癌,心室性期外収縮,発作性心房細動,ブルガダ症候群

整形外科

肩こり,五十肩,肩関節周囲炎,腰痛症,腰椎椎間板ヘルニア,腰椎すべり症,脊柱管狭窄症,座骨神経痛,変形性膝関節症,変形性股関節症,線維筋痛症,帯状疱疹後神経痛,関節リウマチ,骨粗鬆症,脊椎圧迫骨折

婦人科

更年期障害,生理痛,月経前症候群(PMS),生理不順,無月経,冷え性,子宮筋腫,乳汁分泌不全

皮膚科

アトピ一性皮膚炎,じん麻疹,日光過敏症,湿疹,肌荒れ,にきび痕,そばかす,シミ,乾燥肌,薄毛,褥瘡,肝斑,白斑

心療内科

自律神経失調症,うつ病(うつ症状),不眠症,気分変調症,自閉症,引きこもり,不安障害,統合失調感情障害,アルツハイマー型認知症

耳鼻咽喉科

自律神経失調症,うつ病(うつ症状),不眠症,気分変調症,自閉症,引きこもり,不安障害,統合失調感情障害,アルツハイマー型認知症

歯科口腔科

歯周病,歯肉炎,歯槽膿漏,顎関節症,金属アレルギ一,口腔乾燥症,歯科心身症,抜歯・インプラン卜手術後の治癒促進

その他

前立腺肥大,三叉神経痛,パーキンソン症候群,肥満,眼精疲労,視力低下(軽度遠視・近視),緑内障,角膜炎

 

※日本胎盤臨床医学会大会における「臨床発表」から抜粋

 

ラエンネックとメルスモンの違い

ラエンネックとメルスモンの違いについて質問をよく受けますので、簡単に説明します。
①保険適応・期待する効果の違い(当院では保険診療のプラセンタ注射は取り扱っておりません)
ラエンネック:慢性肝疾患における肝機能の改善
メルスモン:更年期障害、乳汁分泌不全
②添加物・痛み
メルスモン:添加物あり(ベンジルアルコール:局所麻酔作用があります)
ラエンネック:無添加なし
③材料・濃度・分子
・メルスモン:低分子物質のみ(胎盤のみ使用)
・ラエンネック:低分子〜高分子物質(胎盤+臍帯=臍の緒の両方を使用)

どちらも、アミノ酸・ミネラル・核酸など、身体・血液・細胞の元になる重要な低分子物質(=生理活性物質)を多く含んでいます。
一方、ラエンネックには高分子物質(=細胞増殖因子)も含まれています。 一般的には高分子は低分子に分解・吸収されますが、一部がそのまま全身を巡ることがあります。この高分子が皮膚に達すると線維芽細胞(=コラーゲンをつくる細胞)を刺激してコラーゲンを作り、皮膚症状の改善に効果があるとされています。
結論として、美容目的であればラエンネック、更年期障害の症状や体の不調を改善したいのであればメルスモンをお勧めすることになると思います。
例えば、「痒みを伴う皮膚症状が改善して、就寝中の痒みが減って睡眠が深くなった」という2次的な効果も期待できるのもプラセンタの特徴ですね。

期待する効果 添加物 含有物質
メルスモン

更年期障害、乳汁分泌不全

ベンジルアルコール

(局所麻酔効果あり)

低分子物質のみ
(=生理活性物質)

ラエンネック

慢性肝疾患における肝機能の改善

無添加

低分子から高分子物質まで

(=生理活性物質+細胞増殖因子)

副作用

・注射部位に時として疼痛・発赤・発疹などが見られることがあります。
・ヒトプラセンタは日本国内の産婦人科において、正常分娩した健康な母親の胎盤を使用し、ウイルスなど
の病原体がいないことを確認しているので、ご安心ください。
・プラセンタ注射を受けた方は、献血ができなくなりますのでご注意ください。

用量と回数

目的や重症度によりますが、効果が得られると思われる目安です。
・週2回なら1回2〜3A
・週1回なら1回3〜4A
*最初の3カ月は間隔を短くした方が、効果を実感しやすいことが多いようです。
*効果については個人差が大きく、これ以上接種しても問題はありません。
*メルスモンはエキナカ院とファミリア院のみの取扱いです。

当院で接種希望の方は、医師・看護師が問診時にご質問お答えいたしますので、
お気軽にご相談ください。

高田 真莉
ペリエ千葉エキナカ院長
東京医科大学医学部卒業
医師が少ない病院の勤務が多く、科の垣根を隔てて、他の科の患者さんの診察や検査など、都心の中の僻地医療を実施

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