① 今シーズンは早い時期に流行の兆しあり、インフルエンザ。

今世の中はコロナウイルスのオミクロン株の亜系統であるXBB.1.2やEG.5による第9波が押し寄せているところですが、9月になりインフルエンザの感染者が増加傾向にあります。通常は気温と湿度が著しく下がる真冬に流行するのがインフルエンザの特徴でしたが、コロナによる感染症と社会や人間の免疫体系の変化により、インフルエンザの流行時期にも大きな変化が見られています。
インフルエンザは非常に感染力が強いことが特徴で、毎年全世界では約10億人、日本では約1,000万人がかかる最大の感染症です。これは昨今世の中全体を覆っている新型コロナウイルスの感染者数と比べても、同等かそれ以上の規模です(コロナウイルスは日本では過去4年間で約5,000万人が感染)。

インフルエンザウイルスは、基本的には接触感染と飛沫感染により伝染りますが、一部空気感染のような状況(エアロゾルにより感染)も確認されており、感染者と距離を取っていたとしても短時間同じ空間にいるだけで感染してしまうことがあります。湿度が30%以下になると急激に感染力が増し、50%以上になると失活しますので、自宅やオフィスの加湿が感染予防に重要です。またコロナと同様、高濃度アルコールで殺菌されます。

そんなインフルエンザウイルスですが、コロナになってからは全く流行が見られませんでした。その理由としては、社会全体が手指消毒やソーシャルディスタンスなどの感染管理を徹底していて、インフルエンザウイルスによる人から人への感染が起こらなかったためと想像できます。加えて大きな要因としてはインフルエンザウイルスは輸入感染症と捉えられており、北半球と南半球を季節ごとに行ったり来たりして感染を繰り返しているウイルスですが、昨年は海外からの渡航がほぼ断絶されていたため、インフルエンザウイルスの持ち込みが発生し得なかったという理由が考えられています。一方で、コロナ禍から脱し始めた昨シーズン(2022-2023年)は一定の流行が見られましたので、今シーズン(2023-2024)はそれ以上の流行があってもおかしくありません。

さらには、過去3シーズン続けて大きな流行がなかったため、日本人のほとんどが抗体活性を失っている状態で、わずかでもインフルエンザウイルスが世の中に入ってくればたちまちその感染力で抵抗のない多くの人の間で大規模な流行が起こる可能性があります。過去の統計を見ても、インフルエンザの流行がなかった翌年には逆に大流行しているというサイクルが実際に確認されています。実際、昨シーズンより南半球でインフルエンザの流行が発生しており、特にオーストラリアでは近年では最大規模の大流行となりました。渡航制限が緩和され、旅行者やビジネス目的の海外渡航が増えてきているため、流行地である南半球の地域からウイルスが運び込まれて日本でも大きな流行があると予想されています。また今年の特徴として、オーストラリアでの流行時期から計算すると、秋口の早い時期から始まるかもしれません。

今、私たち個人そして社会全体がインフルエンザ流行の予防としてできる最大の備えは、インフルエンザワクチンを早期に多くの人が接種するということに他なりません。

内藤 祥
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職

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