5種混合ワクチン tetanus_diphtheria_pertussis_polio_hib
5種混合ワクチンが防ぐ5つの感染症の特徴とリスク
① 破傷風
破傷風は、破傷風菌(Clostridium tetani)が作る毒素で発症します。土壌やさびた釘などに潜む菌が、けがをした傷口から体内に入ると、神経を麻痺させる毒素を産生し、全身の筋肉が硬直し、けいれんを引き起こします。治療しても死亡率が高く、日本ではワクチンでほとんど予防されています。リスク:重篤なけいれんや呼吸停止による死亡。
② ジフテリア
ジフテリア菌の毒素でのどや気道に膜状の病変を作り、呼吸困難を引き起こします。また、菌が出す毒素は心筋や神経にも作用し、心不全や神経障害を引き起こすことがあります。
リスク:気道閉塞、心筋障害、神経障害、致死率も高い。
③ 百日咳
百日咳菌が呼吸器に感染し、特徴的な長引く咳を起こします。特に乳児では無呼吸発作や重度の肺炎、脳症を起こし、命に関わることがあります。日本でも定期接種の導入前は多数の乳児死亡がありました。
リスク:乳児での重症肺炎、無呼吸、脳症、死亡。
④ ポリオ(急性灰白髄炎)
ポリオウイルスによる感染症で、多くは軽症ですが、一部が脊髄の神経を冒して麻痺を起こします。かつては「小児まひ」と呼ばれ、日本でも大流行し、多くの子どもが一生歩けなくなりました。日本ではワクチンのおかげで野生株は根絶状態ですが、海外からの流入リスクは続きます。
リスク:手足の麻痺、呼吸麻痺による死亡。
⑤ ヘモフィルスインフルエンザb型(Hib)
Hib菌は乳幼児に侵襲性の感染症を起こします。代表は細菌性髄膜炎で、命を落としたり、聴力障害などの後遺症が残ることもあります。その他、喉頭蓋炎(急速に呼吸が詰まる)、敗血症、肺炎、骨髄炎、関節炎なども起こします。
リスク:髄膜炎による死亡や後遺症、喉頭蓋炎による窒息死。
5種混合ワクチンとは
5つの感染症を1回の注射で予防する混合ワクチンです。日本ではこれまでDPT(3種)、DPT-IPV(4種)、Hibワクチンを別々に打ってきましたが、接種回数が多い、スケジュール管理が煩雑、痛みが多いといった問題がありました。5種混合ワクチンはこれを1本にまとめ、負担を軽くします。
ワクチンの種類と特徴
【ゴービック】
- 沈降精製百日せき・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオ・ヘモフィルスb型混合ワクチン
- 製造販売元:阪大微生物病研究会
- 販売元:田辺三菱製薬
- 皮下注射・筋肉内注射どちらも可能
- 国内製造抗原を使用
- PRP(Hib多糖)をCRM197(無毒性変異ジフテリア毒素)に結合
- 添加剤:アルミニウム塩による吸着
- 保存:10℃以下、凍結を避ける、有効期間27か月
- 販売開始:2024年3月
【クイントバック】
- KMバイオロジクス製
- 構成抗原、製法はほぼ同様
- 不活化ポリオはセービン株由来
- Hib成分は破傷風トキソイド結合型多糖
- 皮下・筋肉内接種可能
- 保存:2~8℃、有効期間2年
- 販売開始:2024年3月
両者とも国内初の5種混合ワクチンで、接種回数を減らし、接種スケジュールを簡素化できます。
接種対象者
- 生後2か月から90か月未満の小児
- 標準スケジュール:
- 初回免疫:生後2か月~7か月未満に開始、20~56日の間隔で計3回
- 追加免疫:初回終了後6~18か月後に1回
期待できる効果
- 5つの感染症を同時に予防
- 接種回数を8回から4回に減らせる
- 乳児期早期から予防が可能
- Hib髄膜炎、百日咳の重症化を防止
- ポリオ輸入例などからの集団免疫維持
副反応
- 注射部位の腫れ、赤み、痛み
- 発熱
- まれに強いアレルギー反応(アナフィラキシー)
- きわめてまれにショック、血小板減少性紫斑病、けいれん
予防接種を受けられない人
- 明らかな発熱がある
- 重篤な急性疾患にかかっている
- 成分でアナフィラキシーを起こしたことがある
- 医師が接種不適当と判断した場合
接種後の注意
- 高熱、けいれん、強いアレルギー症状があればすぐ医療機関へ
- 24時間程度は入浴可だが長湯を避け、接種部位を清潔に
- 接種当日は過激な運動を避ける
ゴービックとクイントバックの特徴と違い
特徴 | ゴービック | クイントバック |
---|---|---|
製造販売元 |
阪大微生物病研究会 |
KMバイオロジクス |
販売元 |
田辺三菱製薬 |
Meiji Seika ファルマ |
抗原の特徴 |
国内生産、CRM197結合型PRP |
破傷風トキソイド結合型PRP |
接種経路 |
皮下注・筋肉内注射 |
皮下注・筋肉内注射 |
保存温度 |
10℃以下(凍結を避ける) |
2~8℃ |
有効期間 |
製造日から27か月 |
製造日から2年 |
Hib抗原結合体 |
CRM197(無毒性変異ジフテリア毒素) |
破傷風トキソイド |
販売開始 |
2024年3月 |
2024年3月 |
特記事項 |
国内初の5種混合ワクチン |
同じく国内初の5種混合ワクチン |
料金 |
24,500円(税込26,950円) |
24,500円(税込26,950円) |