狂犬病ワクチン rabies-vaccine
狂犬病
原因ウイルス
狂犬病ウイルス(Lyssavirus属、ラブドウイルス科)に属し、神経系を侵します
主な感染経路
発症動物の唾液中ウイルスが咬傷や傷口、粘膜を介して侵入。稀に噴霧を吸引する形でも感染が報告されています
潜伏期間
通常1~3ヶ月ですが、早ければ数日、遅ければ1年以上に及ぶ場合があります
症状
初期は発熱や頭痛、感覚異常。その後、錯乱、水を恐れる“恐水症”、よだれ過多、痙攣、麻痺、昏睡へ進行し、症状出現後の致死率はほぼ100%です
流行地と感染リスク
流行地
全世界150か国以上で発生。特にアジア・アフリカ地域で多く、年間約59,000人が死亡、そのうち95%はアジア・アフリカで発生。東南アジア(例:インド、フィリピン、カンボジア、タイ)で流行が顕著
発症動物
一般的にイヌが主な媒介動物で、世界では犬咬傷による感染がほとんどですが、米州ではコウモリ由来も見られます
日本の状況
戦前には流行していましたが、1950年の予防法制定以降激減。輸入症例はごく稀ですが、2006年(フィリピン由来2例)、2020年(フィリピン由来1例)の報告があります
合併症と病態の特徴
神経疾患合併
ウイルスは神経細胞に進入し、中枢神経系に分布した後、末梢に拡散。致死的な脳炎や神経合併症を引き起こし、呼吸停止に至ります
水恐怖症・錯乱など
典型的な嫌水症状をはじめ、興奮性“狂暴状態”、瞳孔異常、麻痺など多様な神経症状が現れます
狂犬病ワクチン:分類と特徴
脳由来ワクチン
神経系副作用(脳炎・多発性神経炎)が高く、免疫力も弱いため、WHO非推奨
組織培養不活化ワクチン(主流)
- ヒト2倍体細胞ワクチン(HDCV)
- Vero細胞ワクチン(PVRV)
- 鶏胚細胞ワクチン(PCECV)
日本ではHDCV、PVRVは未承認。いずれも高い安全性と免疫持続が特長
接種対象・接種方法
曝露前接種(PrEP)
- 対象:狂犬病流行地への1か月以上の滞在者、野生動物(特にコウモリ)に接触する職・環境、奥地・秘境への渡航者など
子どももリスク大で注意が必要
曝露後接種(PEP)
- 未接種者:WHO推奨スケジュールは以下の通り
皮内:2か所×3回(0、3、7日)
または筋注:1か所×4回(0、3、7、14~28日)
- 既接種者:皮内2回(0、3日)または筋注2回(0、3日)など少ない回数で可
接種後にヒト狂犬病免疫グロブリン(HRIG)を同時接種することもあります。
期待される効果
- PrEP:免疫を事前に作っておくことで、咬傷時に迅速に対応可能。接種回数が少なく、免疫グロブリンも不要
- PEP:症状が出る前の投与でほぼ100%の予防効果を発揮します
副反応と注意事項
- 副反応:主に注射部位の痛み・腫れ・熱感、発熱や頭痛など軽微な症状。重症な神経障害などは稀(特に組織培養ワクチンでは)
- 注意点:
- 既往歴(免疫状態、アレルギー、妊娠等)の確認。
- 正しいスケジュールで接種:途中での中断・遅延は効果に影響。
- 動物に噛まれたらすぐに傷を流水と石けんで15分以上洗浄 → 医療機関でPEP開始
- PrEP接種後でも咬傷を受けた場合はPEPは必要です
料金表
ワクチン名 | 製品 | 価格(税込) |
---|---|---|
狂犬病(国産ワクチン) |
ラビピュール・狂犬病 |
21,500円(税込23,650円) |
狂犬病(輸入ワクチン) |
ChiroRab/Rabivax |
16,500円 (税込18,150円) |