破傷風ワクチン(トキソイド) tetanus-toxoid
破傷風
破傷風は、土壌や動物の糞に広く存在するグラム陽性嫌気性菌の Clostridium tetani(ジフテロイド様桿菌)が産生する毒素により引き起こされる感染症です。本菌は傷口や切り傷を通じて体内に侵入し、毒素(テタノスパスミン)が神経を破壊して、筋肉の激しいけいれん(特に顎、首、背部)、嚥下(えんげ)困難、全身のけいれん発作など重篤な症状を引き起こします。
破傷風の感染リスク
主な感染源:けが(引っかき傷や刺し傷など)からの土壌汚染、錆びた釘による穿刺、畑作業やガーデニング中の不衛生な傷などが代表的。
リスクが高まる状況:
田畑、山林、農村部でのアウトドア活動
ガーデニングやDIYで傷がついた時
海外旅行中に傷を負ったが適切な処置をせずに放置した
感染は傷口を介してのみ起こり、人から人への直接感染はありません。
流行地
破傷風菌は世界中の土壌に存在し、日本国内でも年間数十~百例程度の患者発生があり、特に農村部や自然豊かな地域で。海外でも熱帯~温帯の途上国で傷のケアが不十分な場合のリスクが高いとされています(例:農業や屋外活動が多い地域)
破傷風の合併症
破傷風の主な合併症には以下があります。
未治療・重度の場合、死亡率は10~50%にも上ります
呼吸筋の痙攣による呼吸不全
持続する痙攣による筋肉・骨格系のダメージ
延長した痙攣状態からの栄養不良・脱水
治療中の肺炎、心機能障害、腎機能障害
破傷風ワクチン(トキソイド)
分類と特徴
- トキソイドとは、破傷風菌が産生する毒素を化学処理(ホルマリンなど)で無毒化したもの。
- 日本で使用されている沈降破傷風トキソイド製剤は定番ワクチンで、長らく使用実績があります
接種対象者
- 成人・小児ともに、以下のような場合に推奨されます:
- 初期接種シリーズが未完了の子ども(通常3回接種)
- 10年ごとのブースター接種(子どもも成人も対象)
- けがをした際の救急対応として不十分な免疫歴の場合、追加接種が必要
- 破傷風免疫が低下している人(慢性病、免疫抑制治療中など)
接種方法
負傷時のワクチン不使用歴の場合、医師が傷の深さや汚染状況等を考慮し緊急に接種を判断します。
通常、筋肉注射(上腕または大腿)で0.5 mLを注射。
初回接種では1回ずつ数週間~数ヶ月間隔をあけて複数回接種し、その後は10年ごとの追加接種が一般的です。
期待できる効果
- 接種により破傷風毒素に対する中和抗体が産生され、感染予防効果を発揮。
- ブースター注射により、長期にわたって免疫レベルを維持できます。
- 傷ができても、重症化を防ぎやすくなり、生存率向上につながるため極めて重要です。
副反応
一般的に安全性が高いワクチンですが、以下のような副反応が起こることがあります:
- 注射部位の痛み・赤み・腫れ
- 発熱、倦怠感、軽い頭痛などの全身反応
- ごく稀ですがアレルギー反応(蕁麻疹、呼吸困難等)の発生に注意
- 過去にトキソイドワクチンで重い副反応(神経障害、ショック等)を起こした人は慎重に検討が必要
予防接種を受けるときの注意事項
- アレルギー歴の確認:卵や抗生物質など特定成分へのアレルギーがある場合は、医師に必ず伝えてください。
- 海外渡航前の接種:出発の最低30日前までには初回接種やブースターを済ませるのが望ましいです
- けが後の対応:けがをしたら、まずは傷の洗浄・消毒、その後履歴に基づきワクチン接種が必要か判断。
- 併用ワクチン:ジフテリアや百日咳など他のトキソイド系ワクチンと組み合わせて接種されることが多く、効率的な免疫獲得に繋がります。
- 妊娠中:必要に応じワクチン接種が検討される場合があり、担当医と必ず相談してください。
料金表
ワクチン名(国産) | 製品 | 価格(税込) |
---|---|---|
破傷風ワクチン |
破傷風トキソイド |
6,500円(税込7,150円) |