子宮頸がんとHPVワクチン | わかりやすく解説します! Part3で「HPVワクチンの副反応と接種の実際」

はじめに

Part2ではHPVとワクチンの有効性について解説しました。HPVは子宮頸がんだけでなく、肛門がん・中咽頭癌がん・陰茎がん・膣がん・外陰がんの原因になり、尖圭コンジローマなどの良性のイボも引き起こします。ワクチンの種類によってカバーされるウイルスの型は異なりますが、約70〜90%の前がん病変・子宮頸がんを予防できると報告されています。ワクチンの有効性は非常に高いですが、副反応を懸念される方は多いのではないでしょうか。

HPVワクチンの副反応

2価・4価・9価ワクチンで副反応に大差はなく、主なものは表1の通りです。

頻度

副反応の種類

10%以上

接種部位の疼痛(50%以上)、接種部位の発赤・腫脹

1~10%

接種部位の痒み・出血・不快感、頭痛・めまい、筋肉痛・関節痛

1%未満または不明

接種部位の痺れ、手足の痛み、腹痛・下痢、疲労感・倦怠感

表1. HPVワクチンで報告されている主な副反応(各ワクチンの添付文書をもとに作成)

100万接種あたり1件未満と非常に稀ですが、その他の重大な報告として、アナフィラキシー(アレルギー反応に伴う発疹・呼吸困難・血圧低下など)、ギランバレー症候群(足先からの脱力)、急性散在性脳脊髄炎(頭痛・嘔吐・意識低下)などがあります。ただいずれもHPVワクチン特有ではなく、他のワクチンの接種でも報告されています。また頻度不明ですが、注射に伴う痛み・恐怖・興奮がきっかけで、急性ストレス反応(動悸・過換気・発汗・痺れ)や血管迷走神経反射(血圧低下・徐脈・めまい・失神)が起こることは珍しくないです。自律神経のバランスが乱れることが原因であり、短時間で自然に良くなります。これらの問題もHPVワクチン特有ではなく、声かけによる緊張緩和、座位・臥位での接種、細い針の使用、接種後の経過観察(15-30分)である程度は予防できます。

多様な症状の報告

日本では2013年4月からHPVワクチンの定期接種が開始されましたが、広範な疼痛・運動障害など多様な症状の報告が相次ぎました。マスコミでも大きく報道され、国民に適切な情報提供ができるまで定期接種を積極的に推奨すべきではないとの意見を踏まえ、2013年6月に積極的推奨の差し控えが決定されました。定期接種の位置づけは維持されましたが、自治体からの個別通知がなくなり、HPVワクチンの接種率は約70%から1%未満に激減しました。その後は専門家によって多様な症状とHPVワクチンの関連性が検証されました。厚生労働省による全国調査では、HPVワクチンを接種していない女性にも多様な症状を認めました。また名古屋で行われた大規模なアンケート調査で24の症状が検証されましたが、HPVワクチン接種者と非接種者に差は認めませんでした。海外からの報告も同様であり、2021年11月に接種推奨の再開がようやく決定しました。

多様な症状は機能性身体症状と考えられ、何らかの身体症状はあるものの、画像検査や血液検査を行ってもその症状に合致する異常所見が見つからない状態です。ワクチンの成分との因果関係は証明されておらず、生物的・心理的・社会的因子が複合的に関係していると考えられています。
全国調査では、HPVワクチン接種後に重篤な症状が報告された割合は、接種1万人あたり約5人(0.05%)です。万が一健康被害が生じた場合は、全国で設置されている窓口に相談できます。実際に専門の医療機関で薬剤・カウンセリング・リハビリ治療を受けた結果、70-80%の方は症状が消失または軽快したとする報告があります。またHPVワクチンに限らず、ワクチンを適正に接種したにもかかわらず重篤な健康被害を生じた場合は、法律に基づく救済を受けられます。

接種対象とスケジュール

国産のHPVワクチンの接種対象と標準的なスケジュールは表2の通りです。一般的なワクチンと
異なり、筋肉注射で接種されます(新型コロナウイルスのワクチンと同様です)。

2価ワクチン

4価ワクチン

9価ワクチン

商品名

サーバリックス®

ガーダシル®

シルガード9®

発売時期

2009年12月

2011年8月

2021年2月

対象年齢(定期接種)

小学校6年生~高校1年生相当の女性

小学校6年生~高校1年生相当の女性

対象外

対象年齢(任意接種)

10歳以上の女性

9歳以上の男女

9歳以上の女性

接種スケジュール

初回, 初回1ヶ月後, 初回6ヶ月後

初回, 初回2ヶ月後, 初回6ヶ月後

初回, 初回2ヶ月後, 初回6ヶ月後

表2. 国産HPVワクチンの接種対象とスケジュール

既に述べたように、早い時期に接種を開始することが望ましく、国際的には26歳までが推奨されています。ただ45歳まではワクチンの効果があるとの報告があり、感染していない型による新規感染の予防、前がん病変や尖圭コンジローマの減少が期待できます。またHPVは性交渉で感染するため、男性への接種も重要です。日本では4価ワクチンに限定されていますが、海外では男性への9価ワクチンも実施されており、定期接種となっている国もあります。女性への感染を減らし、肛門がん・中咽頭癌がん・陰茎がん・尖圭コンジローマの減少も期待できます。

今後の展望

接種推奨の再開が決定されましたが、接種の機会を逃した方は8学年以上に及び、公費によるキャッチアップ接種が計画されています。海外では15歳未満で接種を開始した場合、2回接種でも同様の効果を得られるとの知見があり、負担軽減のために今後2回接種への変更が期待されます。

おわりに

全3回にわたり、子宮頸がんとHPVワクチンの有効性および副反応について解説してきました。HPVワクチンは子宮頸がんを予防する効果が非常に高く、その他のHPV関連疾患も減少させます。副反応は一定の割合で起こりますが、総合的に考えると、やはりワクチン接種のメリットの方が大きいです。厚生労働省が作成したリーフレットも参照していただき、最終的には個人の判断で接種をご検討ください。当院ではガーダシル®(国産4価)・ガーダシル9(輸入9価)・シルガード®9(国産9価)を扱っております(※ガーダシル9は男性へも接種可能です)。いずれも事前予約が必要になりますので、接種をご希望される方は事前にお問い合わせください。

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子宮頸がんワクチン

<参考資料>
・日本産婦人科学会: 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
https://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
・こどもとおとなのワクチンサイト
https://www.vaccine4all.jp/topics_I-detail.php?tid=9
・Know VPD: HPVワクチン
https://www.know-vpd.jp/children/va_c_cancer.htm
・厚生労働省: ヒトマピローマウイルス感染症〜子宮頸がんとHPVワクチン
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html

田 陽
東京ビジネスクリニック 常勤医師
大阪市立大学医学部卒業。千葉県内で医師研修を受け、上海での駐在日本人向けの医療を実施。
その後川崎市内で家庭医療を研修し、東京ビジネスクリニックの常勤医師となる。

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