妊娠を考えているすべての方々へ 風しんの話

風しんとは?

風しんは、風しんウイルスによって引き起こされる感染症であり、感染力が非常に強く、発熱や発疹などの症状を伴います。
かつては「三日ばしか」と呼ばれたように、麻しんに似ているものの一般的には症状は麻しんに比べ軽度とされています。
ただ妊婦が感染すると胎児に重大な影響が出ることがあるなど、注意が必要な感染症であることに変わりありません。

風しんの経過は?

風しんの症状は、感染後14~21日の潜伏期間を経て現れます。
主な症状としては、発熱、発疹、リンパ節の腫れなどが挙げられます。麻しんに比べて鮮やかな色調の小さな発疹が、顔から始まり全身に拡大し数日で消退します。
周囲の接触者への感染リスクが高いのは、症状が出る前から発疹が出てからの数日間です。

日本で風しんは流行しているの?

風しんは、現在でも世界中で流行を繰り返しています。
ワクチン接種が普及している国や地域では、流行の頻度や規模が大幅に減少しています。逆にワクチン接種率が低い地域では、風しんのアウトブレイクが報告されることもあります。
日本では4-5年おきに風しんの流行を繰り返してきましたが、2012-2013年に1万人以上の大きな流行があり、その後は毎年2,000人程度の感染者が報告されています(コロナ前までの数値)。

妊婦への風しん感染は大問題

母親が妊娠中に風しんに罹ってしまうと、風しんウイルスが胎盤を介して胎児に感染することにより、胎児に先天性の障害を起こします。
これを先天性風疹症候群と呼びますが、感染した胎児は、白内障、難聴、心疾患などを持って生まれ、その後の人生に重大な影響を与えることとなります。
日本では風しんワクチンの定期接種と妊娠前接種の奨励活動により患児は激減していますが、まだ毎年数例の報告は続いています。

風しんの感染経路は?

風しんウイルスは、感染者の鼻やのどの分泌物を通じて他人に感染します。
主に、咳やくしゃみで飛び散る飛沫感染によって広がります。また直接接触や共通の物品を介しても感染した報告があります。

風しんの症状

風しんの典型的な症状には以下のようなものがあります。

発熱
顔や首から全身へ広がる発疹
首の後ろを中心としたリンパ節の腫れ
頭痛や筋肉痛
多くの場合、これらの症状は軽度で、数日で自然と回復します。

風しんの治療

風しん自体は特定の治療法が存在するわけではなく、多くの場合は自宅で安静にして、症状が治まるのを待つことになります。
発熱や痛みに対しては市販の解熱鎮痛剤で緩和することが可能です。
ただし妊娠初期の女性が感染した場合には胎児への影響が懸念されるため、すぐに医師の診断を受けることが必要です。

風しんはワクチン接種で確実に予防できます

アジアの全域で風しんの罹患リスクは日本のそれよりも高くなっています。
風しんの最も確実な予防方法はワクチン接種です。
渡航先の感染症情報を確認し、また自身の接種歴や抗体価を確認し、必要ならば追加のワクチン接種を検討しましょう。
万が一、現地で風しんの症状が現れた場合、他者への感染を防ぐために人混みを避け、すぐに現地の医療機関を受診しましょう。

風しんワクチンは2回必要

風しんワクチンは、弱毒化生ワクチンに分類され、風しんウイルスに対する免疫を体に築き上げることで、感染やその合併症を非常に効果的に予防します。特に、妊娠を希望する女性にとっては非常に重要です。
WHO(世界保健機関)、CDC(アメリカ疾病対策センター)ともに、世界中のあらゆる人が風しんワクチンを幼少期に2回接種することを強く推奨しています。

風しんワクチンの副作用について

風しんワクチンは一般的に安全とされていますが、稀に以下のような副作用が報告されています。

注射部位の赤みや腫れ
発熱
発疹
関節痛
これらの症状は通常は軽度であり数日で自然に回復します。非常に稀に重篤なアレルギー反応が起こることがあります。

風しんワクチンの接種スケジュールについて

風しんワクチンの接種スケジュールは国や地域により異なることがありますが、一般的なスケジュールは以下の通りです。

定期接種として、幼少期に2回の接種を完了させます。
・初回接種:1歳頃
・2回目:2歳頃(初回接種から1年以上の間隔をあける)~就学前
妊娠を希望する女性とそのパートナーは風しんウイルスに対する抗体検査を行い、抗体価が低い場合には風しんワクチンの追加接種をします。
日本ではMRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)が使用され、海外ではMMRワクチン(麻疹、ムンプス、風しん3種混合ワクチン)が一般的に使用されています。

まとめ

風しんは、流行のある途上国への渡航者のみならず、妊娠を希望する女性とその家族、また学校や保育園での集団感染など、現代にあっても社会的な影響力の大きな感染症であると言えます。風しんワクチンは、自身だけでなく、社会全体の感染リスクも低減させることができます。ワクチンの接種スケジュールや効果、副作用について十分に理解し、適切な予防策をとるよう心掛けましょう。

内藤 祥
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職

 

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