コロナワクチンってどんなワクチンなの?

新型コロナウイルスのワクチン接種がいよいよ始まります。
今回はそのワクチンについて解説をしていきたいと思います。

どんなワクチンなの?

新しいタイプのワクチン

従来の生ワクチンや不活化ワクチンとは大きく異なる機序のワクチンが開発されています。
現在、世界で使用され始めているワクチンは、いずれもウイルス抗原の遺伝子を用いたワクチンで、大きくはベクター型と核酸型に分類されます。

遺伝子を用いたワクチンとは

ファイザー社やモデルナ社のワクチンは、メッセンジャーRNAという核酸(遺伝子)を人体へ注入することで、体内の細胞にウイルス抗原蛋白を生成させます。
よく見るコロナウイルスの周囲のトゲトゲの部分だけを、体の中で安全に大量に作る遺伝子です。
これにより人体は、コロナウイルスに実際に感染することなく、コロナウイルスの体の一部の特徴的な形だけを記憶して、抗体免疫を高めることができます。
メッセンジャーRNA遺伝子は、不安定な物質のため自然に分解され細胞外へ排泄されます。

ワクチンの接種部位について

インフルエンザワクチンのような皮下注射と異なり、筋肉注射で接種を行います。
実は皮下注射をしている国は日本とその他わずかあるだけで、世界的にはワクチンは筋肉注射で打つことが主流です。効果と副作用の面から筋肉注射の方が優れた接種方法であるとされています。
皮下注射は肘のすぐ上に打ちますが、筋肉注射は肩の近くの三角筋という部分に接種します。
針をより深くに刺しますが、痛みが特別に強いということはなく、接種方法の違いによる心配は不要です。

接種回数について

2回接種(ファイザー社ワクチンは21日後以降、モデルナ社ワクチンは28日以降)が必要です。
1回のみでは効果が不十分とされていますので、必ず2回接種します。また3回以上の接種は、研究データがなく推奨されていません。
2回接種の間隔が規定日数開かなかった場合(短縮して接種してしまった場合)には2回目を打ち直しとなります。2回目の間隔が長く開いてしまった場合には問題ありません。
1回目と2回目のワクチンは同一のものでなければなりません。

新しいワクチンは有効なのか

第3相試験において、有効率は95%(ファイザー社)、94.5%(モデルナ社)、60-90%(Astra Zeneca社)と非常に高い発症予防効果が確認されています。
これは同人数ずつワクチンを打った人と打たない人で比較すると、コロナに感染する人の数が5人と100人と差が出て、差し引き95人がワクチンにより感染せずに済んだという解釈となります(ファイザー社ワクチンの例)。参考として、インフルエンザワクチンの有効率は70-90%程度ですので、単純比較するとコロナワクチンの有効性はとても高いことが分かります。
現時点の研究データでは、これらの新しいワクチンによりコロナウイルス感染症の発症を大きく減少させるといえます。
一方で、他人へ伝染す感染性を減少させるかははっきりとしたデータがなく、集団免疫(=社会や組織全体での流行を抑えることができるか)に関してはまだわかっていないのが現状です。
アメリカのCDC(疾病予防管理センター)ではそれでも周囲の感染を防ぐためにワクチンを接種することを推奨しています。

気になる副作用について、現時点で言えること

メディアで色々な意見や憶測が飛び交っていますが、科学的なデータと専門家の意見を客観的に集約すると以下の通りです。

  1. 局所反応(接種部位の腫れや痛み)は出やすい、倦怠感や発熱は接種者の約10%に出現
  2. 他のワクチンに比べてアレルギー反応が出やすく、一部はアナフィラキシーに移行
  3. ADE(抗体依存性免疫増強)の可能性を考慮(ワクチンを打った人の方が、感染時に重症となる現象)
  4. 長期的な人体への影響についてのデータがない
  5. 接種をためらうような重篤な有害事象や後遺症等は確認されていない

(6月23日追記)当院のスタッフにおいて副反応について調査を行い、以下の記事にまとめました。
あくまで東京ビジネスクリニックにおける調査結果に基づく評論であるため、一般に公表されている副反応の結果とは必ずしも頻度や数値が一致しないことがあることを理解の上で御覧ください。


(追記終了)

ワクチンを接種してはいけない人

1回目のコロナウイルスワクチンで重篤なアレルギー反応があった人は接種できません。
過去に他のワクチン接種により重篤な即時型アレルギー反応が起こったことがある人は禁止ではありませんが、医師と相談の上での判断となります。一般的な食べ物のアレルギーや食物アレルギー、もしくは喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患があっても接種には問題がありません。
妊娠中、授乳中の安全性に関するデータがありませんが、動物実験では安全性が確認されています。避妊をする必要はありません。また小児に対する有効性や副反応のデータも限られています。

どんな会社がワクチンを作ってるの?

現在、日本で採用が予定されている新型コロナウイルスワクチンは、ファイザー社(米)、モデルナ社(米)、アストラゼネカ社(英)の3社です。
その中でもファイザー社のワクチンを使用した集団接種が3月より開始されることになりました。
その他にどのような会社がワクチンを作っているのかを見ていきましょう。

世界の主要なワクチン

2021年1月現在、世界で実用されている、もしくは実用レベルに到達しているワクチンには以下の5つがあります。

  • CanSinoBIO(アデノベクターワクチン 中国)
  • Gamaleya Research Institute(アデノベクターワクチン ロシア)
  • Moderna(メッセンジャーRNAワクチン アメリカ)
  • Pfizer(メッセンジャーRNAワクチン アメリカ)
  • Astra Zeneca(アデノベクターワクチン イギリス)
開発中の国産ワクチン 実用化にはまだ半年以上はかかりそう

国産ワクチンの開発も進んでいますが、2021年1月の時点で最も早いものでも臨床試験第2相までしか到達していません。

  • 大阪大学/アンジェス/タカラバイオ(ベクターワクチン DNAプラスミド)
  • 東京大学医科学研究所/第一三共(メッセンジャーRNAワクチン)
  • 国立感染症研究所/UMNファーマ/シオノギ製薬(組み換え蛋白ワクチン)
  • 東京大学医科学研究所/国立感染症研究所/KMバイオロジスティクス(不活化ワクチン)

日本における接種

スケジュール

1月25日付けの厚生労働省の資料では、優先順位を踏まえてワクチン接種が実施されると説明されています。
先行接種は医療社向け(370万人)が3月より、続いて高齢者向け(3,600万人)が4月より、6月頃より基礎疾患を有する者(820万人)、高齢者施設等の従事者(200万人)、60-64歳(750万人)と順に接種順番が回ってきます。
優先接種だけでも約5,500万人となりますので、おそらく半年かかりになると予想され、一般住民への接種は2021年秋頃の開始となるようです。

接種の具体的な政策

想定される接種対象者は6,500万人で2回接種ですので、計1億3,000万回の接種が必要となります。2021年1月現在で、世界で最も接種が進んでいるアメリカでも接種者は3,000万人に届いていません。今回の新型コロナウイルスワクチンはすべて国の公費負担により接種が実施されます。対象者には自治体より接種クーポンが順次配布され、決められた医療機関、決められた期日での計画接種となる見込みです。
主要な接種会場を設けての集団接種の他、接種人数が極めて多いため、一般病院や町中の医院など日本中のあらゆる医療機関と医療者が協力し一丸となって接種事業に取り組む必要があります。

ワクチンに関してのよくある疑問

過去にコロナウイルスに感染した人にはワクチンを接種してもいいの?

臨床試験での安全性が確認されているので、感染が症候性・無症候性のいずれの場合においても接種を推奨すべきとされています。新型コロナウイルス感染直後は再感染はしにくいため、感染後数ヶ月は接種を延期しても構いません。

ワクチンを接種すればマスクなしでも大丈夫なの?

他者への感染性を減らせるかどうかや、ワクチンの有効性がどれくらい続くかは不明確ですので、マスクの装着や手指衛生、密を避ける行動は継続するようアメリカCDCも呼びかけをしています。

接種後に新型コロナウイルスに感染した場合はどうなるの?

接種後にコロナウイルスに感染してしまった場合の研究データは限られていますが、理論上は症状が軽くなり重症化しにくくなると予想されます。また治療薬の選択等には影響しません。

新型コロナウイルス患者と濃厚接触した直後にワクチンを接種すれば発症を予防できるの?

潜伏期間は通常4-6日であり、ワクチンの効果が期待できる期間に比べて短いため、発症予防効果は現時点ではないとされています。
また濃厚接触者となってしまった場合には、指定された隔離期間が終了するまではワクチンは接種できません。接種する医療従事者や、接種場所にいる他の方への感染の可能性を防ぐ必要があるためです。

ワクチン接種により、PCR検査が陽性となることはあるの?

PCR法、抗原検査は陽性となりません。ただし抗体検査の一部は陽性となる可能性があります。

接種を受けるべきかどうかのまとめ

アメリカCDCの情報やワクチン専門家の意見としては以下が主流ですが、まだ確立された見解が存在しません。接種の機会は順番に回ってきますが、接種するかどうかは本人の判断に委ねられています。

  1. 接種を受けた本人のメリットは発症予防効果として大きい
  2. 高齢者や基礎疾患を有するハイリスク者は接種メリットがさらに大きい
  3. 他人への感染性、集団免疫の獲得についてはまだ分かっていない
  4. 長期的な有害事象については今後も継続して観察が必要
  5. ワクチン接種後も、感染予防策(マスク着用や密を避けること)は必要

参考)
日本経済新聞 チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は
アメリカ疾病予防センター(CDC) COVID-19 Vaccines

※この記事の内容は2021/01/28時点での情報です。
状況は常に変わっていますので必ずしも最新の情報を掲載しているとは限りません。

内藤 祥
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職

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