世界最大の感染症 マラリア

マラリアは、寄生虫の一種である「プラスモジウム」というマラリア原虫によって引き起こされる病気です。
この病気は、主にアノフェレス属の蚊(日本語名でハマダラカ)が媒介することで人から人へと感染します。
流行地としては、サブサハラアフリカ、東南アジア、南アジア、中東、中央アメリカおよび南アメリカの一部が挙げられます。

マラリアの世界的な感染者数

マラリアは、特に熱帯および亜熱帯地域で広く流行している感染症です。世界保健機関(WHO)の報告によると、2023年の時点で、世界中で約3億人がマラリアに感染しており、そのうち数十万人がマラリアによって命を落としています。感染者数としては、サハラ周辺の西アフリカ諸国が大半を占めています。

マラリア罹患時のリスク

マラリアに感染すると、体内でプラスモジウム原虫が増殖し、重篤な健康問題を引き起こすことがあります。最も重い形態である脳マラリアは、治療を受けない場合、死に至るリスクが非常に高いです。また、貧血、急性腎不全、肺の合併症など、多岐にわたる重篤な合併症を引き起こす可能性があります。妊娠中の女性や幼児、免疫力が低下している人は特にリスクが高いとされています。

マラリアは蚊に刺されることで感染します

マラリアは、感染したアノフェレス蚊に刺されることで人間に感染します。蚊はプラスモジウム(以下、マラリア原虫)を含んだ唾液を人の血液に注入し、これがマラリアの感染を引き起こします。?また、血液を介した感染(輸血、共有針など)や、妊娠中の母親から胎児への垂直感染も稀に報告されています。

マラリアを媒介するハマダラカの種類と特徴は

マラリアの主な媒介者はハマダラカ属の蚊です。ハマダラカは黒色の4-7mm程度の蚊ですが、世界で約430種が存在し、その中の40種ほどがマラリアの伝播に関与しています。特に夕方から夜間にかけて活動が活発になる傾向があります。水辺や湿地に近い環境を好み、ここで繁殖を行います。

マラリアの症状

マラリアの初期症状は、インフルエンザに似ていて、特定が難しいことがあります。感染後10日から4週間で発症することが多いです。
初期症状には以下のようなものが含まれます

発熱
寒気
頭痛
筋肉痛
倦怠感
吐き気や嘔吐

マラリア発症後の経過

発症後、治療を受けない場合、症状は周期的に悪化します。熱、寒気、発汗が周期的に現れるのが典型的です。特に熱帯熱マラリアは重症化しやすく、迅速な治療が必要です。

マラリアの合併症

重症マラリアでは、以下のような合併症が起こる可能性があります:

脳マラリア
肺水腫や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
急性腎不全
重度の貧血
低血糖

マラリアの予後

適切な治療を受ければ、予後は一般に良好です。しかし、重症マラリアや合併症が発生した場合、致死的になる可能性もあります。特に妊婦や幼児、免疫機能が低下している人は重症化しやすいため、注意が必要です。

マラリアの診断方法

マラリアの診断は、血液検査によって行われます。これは、マラリア原虫を直接確認する最も確実な方法です。迅速診断キットも利用されることがあり、これは血液中のマラリア原虫特有の抗原を検出します。

当院では、迅速検査キットを採用しており、その場でマラリアへの感染の有無を確認することが可能です。

マラリアの治療

マラリアの治療には、抗マラリア薬が使用されます。最も一般的な治療薬にはクロロキン、アルテミシニン系薬剤、メフロキン、ドキシサイクリンなどがあります。?ただし、薬剤耐性の問題も報告されており、地域によって推奨される薬剤が異なることがあります。

マラリアの治療までの時間と費用

マラリアの治療時間と費用は、患者の居住地域、感染しているマラリア原虫の種類、症状の重さ、治療に使用される薬剤によって異なります。治療は通常、診断後すぐに開始され、軽症の場合は数日間の服薬で改善することが多いです。しかし、重症マラリアや合併症がある場合は、長期の治療や入院が必要となることもあります。

費用については、国や地域、医療制度によって大きく異なります。開発途上国では、しばしば治療費用が高額になることがあり、経済的な負担が大きい問題となっています。一方で、多くの国では公的医療制度や国際援助を通じて、無料または低コストで治療が提供されることがあります。

マラリアの予防としての虫刺され対策

蚊に刺されないようにすることが最も重要です。

1. 蚊帳の使用
特に夜間: マラリアを媒介する蚊は夜間に活動が活発なので、睡眠時には蚊帳の使用が効果的です。

2. 蚊除け剤の活用
成分の選択: DEET(ジエチルトルアミド)を含む蚊除け剤が有効です。肌や衣服に直接スプレーし、定期的に塗り直しましょう。

3. 長袖の服装
身体の露出を最小限に: 長袖のシャツ、長ズボン、靴下などを着用して、肌の露出を減らすことが重要です。

4. 殺虫剤の使用
住居内の蚊を減らす: 屋内で殺虫剤を使い、蚊の侵入を防ぎます。また、窓やドアに網戸を取り付けるのも効果的です。

5. 繁殖地の管理(国や地域の衛生管理)
水たまりの除去: 家の周囲の水たまりや容器内の水を定期的に取り除くことで、蚊の繁殖を抑えることができます。

また感染リスクが高い地域への旅行時には、予防薬の服用が推奨されます。

マラリアの予防薬

マラリアの予防薬としては、クロロキン、ドキシサイクリン、メフロキン、アトバコン/プログアニルの組み合わせなどがあります。これらの薬は、感染地域に入る前に開始し、帰国後も一定期間続ける必要があります。
当院では、予防効果と副作用の観点から、アトバコン/プログアニル(マラロン配合錠R)を推奨しています。マラリア流行地に入る2日前より内服を開始し、流行地を離れた後も7日間は内服を継続します。これによりマラリアへの感染リスクを大幅に低減することができます。

まとめ

マラリアは適切な予防と早期治療が鍵となります。初期症状を見逃さず、迅速な診断と治療を受けることが重要です。特に重症化や合併症のリスクを低減するためには、予防策を徹底し、感染した場合は直ちに医療機関での対応を求めることが求められます。
またマラリアを媒介するハマダラカに刺されないために、蚊の忌避対策を実行することが重要です。
特に夕暮れ以降の屋外活動を避け、適切な服装と蚊除け剤の使用を心がけましょう。

内藤 祥
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職

 

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