感染症分類の話をしよう

感染症分類とは?なぜコロナは2類なの?なぜ2類からいきなり5類なの?

未知のコロナウイルスが世の中に姿を現してから2年半が経ちました。世の中の価値観や基準が一変してしまったコロナ禍で翻弄され、あっという間だったような、それでいて出口の見えない長い暗闇のような、そんな時間でした。

日本でもやっとこの新型コロナウイルス(COVID19)の扱いが変わろうとしています。ずいぶん前から議論されてきた感染症分類について、2類から5類への変更がついに現実味を帯びてきました。この感染症分類とは何を基準に決められているのでしょうか。2類から3類や4類へではなく、いきなり5類に変更になるのはなぜなのでしょうか。今回は感染症分類についてその成り立ちと変遷、そして定義と考え方についてお話していきます。

感染症法とは

人類の医学の歴史はほぼ感染症との戦いと同義で、日本でも約60-70年前までは人の死因の多くは感染症によるものでした。かつて伝染病予防法と呼ばれていた日本における感染症対策の法律が、近代のものに合わせて大きく改定されたのが1999年の感染症法の成立です。感染症法とは、まさに今回のCOVID19のようなこれまで世の中になかった新しいウイルスによるパンデミックを予防するための法律なのですが、実は過去に別のタイプのコロナウイルスの流行(SARSとMERS)、また新型インフルエンザの感染拡大によりこの感染症法は何度か修正されてきています。この経緯を振り返りますと、今回のCOVID19の出現は過去のコロナウイルスの流行から必然的に予想され得るものだったとも考えられ、またここ20年間の日本における感染症の焦点は、新型コロナウイルスと新型インフルエンザウイルスとの戦いであったと言うこともできるでしょう。

感染症分類とは

感染症分類とは、これまでに説明してきた感染症法において感染予防の観点からウイルスを危険度別に並べた分類のことです。
1類から5類までの定義をシンプルに説明すると以下の通りです。

1類感染症
感染力が極めて強く、また罹患した場合には致死的となる、危険度が最も高い感染症を指します。「アウトブレイク」という映画のモデルにもなった、エボラ出血熱などが分類されます。1類感染症がもし国内で発生した場合は、無症状者でも強制隔離や行動制限をするなどいわゆるロックダウンなどの実施が法的に可能となります。

2類感染症
1類ほどではありませんが、感染力と重症度が高くパンデミックを起こすリスクがあるなど、予防の観点から重要な感染症と定義されます。過去に流行した新型コロナウイルス(SARSやMERS)と新型の鳥インフルエンザウイルスはいずれもこの2類に分類されてきました。その経緯もあり、今回の新型コロナウイルスCOVID19も発生当初より2類感染症に分類されました。感染症法上では感染者の就業制限等は可能ですが、本来は無症状者の行動制限は行うことができず、COVID19における緊急事態宣言は別の法律の適用(新型インフルエンザ等対策特別措置法など)により施行されました。

3類感染症
集団食中毒など、主に食べ物や飲み水を介して集団発生し多くの感染者を発生させる可能性のある感染症が対象となっています。数年おきに日本でも集団食中毒で話題となる大腸菌O157や、アジアからの輸入感染症として比較的頻度の高い赤痢や腸チフスなどが分類されます。

4類感染症
4類は特殊なくくりで「人畜共通感染症」と呼ばれ、動物や虫などを介して人に感染する感染症の一群のことです。例えば、東北地方でマダニに噛まれることで感染するリケッチア感染症(ツツガムシ病)や、北海道で野生のキツネを触ることで感染するエキノコックス症、蚊により媒介されるマラリアや日本脳炎などが挙げられます。

5類感染症
危険度がさほど高くないものの、感染拡大を防止すべき感染症で、国が感染症発生動向調査を行い、流行状況情報を公開している感染症です。麻疹(はしか)や風疹、おたふく風邪や水ぼうそう、他にも手足口病やインフルエンザなど、しばしば流行が見られ世の中では比較的よく耳にする身近な感染症が含まれています。5類感染症は、就業制限や行動制限等の法的な拘束力はなく、感染予防の方法や隔離を実施するかどうかは患者さん自身の判断に委ねられます。

補足ですが、これら1~5類感染症分類とは別に、新型インフルエンザ感染症、指定感染症、新感染症、などの分類も別枠として設定されています。


厚生労働省ホームページより引用)

コロナはついに2類から5類へと変更されるのでしょうか

コロナウイルスがなぜ2類感染症なのかについては、上記の通り致死率など危険度の高いSARSやMERSなどの過去に流行した新型コロナウイルスが2類に分類されていたことを継承した結果です。そして3類と4類は特殊な分類の感染症ですので、今回COVID19は2類から、3類と4類を経由せずに、5類感染症もしくはそれ以外の別枠の指定感染症分類への条件付きでの変更が検討されています。 ただ日本ではコロナワクチンの接種率は欧米並みに高水準ですが、一方でまだコロナ治療薬については使用制限などの理由で一般普及しておらず、高齢者やもともとリスクのある患者さんの重症化率や致死率が依然として高いため、なかなか分類変更の決断ができないのが現状です。

詳しくは 厚生労働省のこちらのリンクもご参照下さい。

 

内藤 祥
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職

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