新型コロナウイルスワクチンに関する情報

感染症とワクチン

新型コロナウイルス感染症の世界的流行で、各国はその制圧に苦労しているところですが、これまでにもパンデミックを起こし、人類に多大な影響を及ぼした感染症としては、天然痘、ペスト、コレラ、スペイン風邪、HIV/AIDSなどが挙げられます。
流行は人や動物の移動に伴って、流行地から他の地域へ拡大することが知られていますが、流行が一旦落ち着いた地域でも、抵抗力(免疫)を持たない人口が多く残っていると再流行を繰り返しその度ごとに社会に重大な被害を及ぼしてきました。上記した疾患では数千万人から数億人の命が奪われています。
人類史上これまでに根絶できた感染症は天然痘のみであり、数十世紀に渡り人類を苦しめたこの疾患の根絶にはワクチンは欠かせないものでした。

病原微生物の発見や感染経路の究明、治療薬やワクチンの開発など医療の発展により、感染管理は進んできましたが近代においても新しい病原微生物の出現などによるパンデミックは発生しており、世界保健機構(WHO)は感染症を含め国際的な公衆衛生上の脅威となりうる全ての事象(Public Health Emergency of Internatiuonal Concern (PHEIC)に対して各国の協調の必要性を訴えています。

また、WHOはパンデミックによる被害の軽減に欠かせないものとして、以下の4つの対策をあげています。

  1. 治療のための医療態勢(診断治療方法確立。治療薬開発を含む)
  2. ワクチンの開発(免疫獲得)
  3. 感染拡大防止の為の公衆衛生対策 (感染症伝播阻止)
  4. 個人防御(マスクや手洗)

災害管理の時にも使われる言葉でMitigation(緩和)と言う言葉があります。
何らかの現象が人の関わるものに対して影響を及ぼした場合に災害が起こりますが、対応策を準備して災害の規模を小さくしようという計画がMitigastion Planと言われます。

パンデミックのような大規模な感染症流行に対するMitigation Planは感染予防対策を行なって、感染者数のピークを小さくすることとそのピークの時期を遅らせるということが重要になります。
感染者数のピークを抑えることによって、医療崩壊を防ぐことができます。
ピークを遅らせることで治療薬やワクチン開発の為の時間稼ぎができます。
緊急事態宣言で外出禁止や個人防衛強化などはこのために行っているといえるでしょう。

流行の終息

感染症根絶には1.感染伝搬遮断手段がある事、2.安価で正確な診断が迅速で行える事、3.感染の経路にヒトーヒト感染が必須な疾患である事の3つの条件が必要条件で非常に困難なことですが、感染対策を行い、流行拡大を防ぐことは可能です。
少数の患者が出ても、急な流行拡大を防止することができれば社会的な混乱は防げます。

感染症に罹り抵抗力ができれば(免疫・抗体ができれば)一部疾患を除いて疾患治癒に繋がり、その後の感染も防ぐとされています。
流行を防ぐためには一定の割合の人口が抵抗力を持つこと(免疫保有率)が必要となるますが、疾患によってその割合は変わってきます。
疾患別の流行阻止のための免疫保有率の計算方法は、免疫を誰も持っていない集団で、一人の患者が何人に感染させるかという値(基本再生産数R0)を使って行います。
感染力が強い疾患程、多くの人が抵抗力(免疫)を持つ必要があります。ウイルスの変異などがないことが条件ですが、例えばR0が16〜21の麻疹の流行阻止には免疫獲得者が人口の90〜95%必要ですが、R0が2〜3のインフルエンザでは50〜70%となっています。

新型コロナウイルス(COVID-19)のR0は今の所、1.4〜2.5とされています。これから計算すると、地域での流行阻止のためにはその地域の人口の30〜60%が免疫を獲得する必要があります。東京都内での調査では抗体保有率は1%にも満たない状況です。
世界的にみても抗体陽性者が流行防止のレベルに達している地域はなく、ワクチン接種による免疫獲得者の増加による流行阻止が期待されている所です。

代表的な感染症の基本再生産数と集団免疫率
感染症 基本再生産数 R0 集団免疫率(%)
麻疹 16~21 90~95
ムンプス 11~14 85~90
風疹 7~9 80~85
水痘 8~10 90?
ポリオ 5~7 80~86
天然痘 5~7 80~85
百日咳 16~21 90~95
インフルエンザ 2~3 50~67*

*小学校の集団
出典:国立感染症研究所 感染症情報センター

ワクチンについて

病原微生物がもつ特有の成分(抗原)を生体内に入れることによってそれらを生体に認識させ、病原微生物が侵入したときに排除する働き(免疫)を獲得させる目的で作成された生物製剤をワクチンと呼んでいます。
症状が出ないように変化させた(弱毒化)病原微生物による感染を起こして免疫を獲得するものを生ワクチン、死滅させた微生物あるいはその成分を用いるものを不活化ワクチンと呼んでいます。

新型コロナウイルス感染症ワクチン(COVID-19ワクチン)

今回接種予定の輸入ワクチンは、これまでのワクチンと違っている点があります。これまでのワクチンはウイルス抗原を体外から体内に接種していますが、今回のメッセンジャーRNAワクチンは接種後に体内で抗原が作られるようになっています。
いわばウイルス特有の抗原を作り出す鋳型を注入し、人が体内でウイルス抗原を作り出すように作られたワクチンです。
生体内でウイルス抗原に対する抗体が作られ、ウイルスの侵入が予防されます。
この鋳型の役割をするmRNAは人工的に作成できるため、ウイルスの培養などは必要ないので短期間で大量のワクチン作成が可能になるという点がパンデミックが起こったときに有用性が高くなります。

ファイザーとモデルナのワクチンは数万人の治験によって効果は90%以上と良い値が得られており、ワクチン接種によって流行の阻止が期待されていますが、数億人規模の人に接種した場合の予期せぬ接種後副反応が懸念されています。

どんな薬剤でも100%安全で100%効果があると言えるものはありません。COVID-19 ワクチンも同様で100%安全とは言えませんが、他のワクチンと同様に免疫反応で起こる副反応はある程度予測できており、体制が整っていれば十分対応可能と考えています。

ワクチンの効果がどれくらい続くのか、変異したウイルスに効果はあるのか、予期せぬ副反応ガ起こらないかなどについては今後の調査研究が必要です。

感染症の急な拡大に対する対抗手段として、十分検討が終わっていないワクチンを緊急で輸入して接種したことはかつての日本でもありました。
ポリオ(小児麻痺)が世界的に流行し、1960年ころから日本でも患者数が急激に増加し、社会的にワクチンの必要性が高まったために1961年当時のソビエト連邦(現ロシア)から生ワクチンを緊急輸入して、小学生以下の小児に接種をして流行を阻止することができました。
1960年の6000を超える国内の患者数は1962年には数十人になり、1972年には国内では根絶されました。ワクチンが如何に効果的であったかが推測されます。この時使ったワクチンは国内で安全性を十分に確認できたものではなく接種反対する意見も出されていました。結果論ではありますが現在60歳前後の方たちはこのワクチンの恩恵を受けて今日に至っています。

さいごに

はるか昔から、人類はいくつもの感染症に脅かされてきました。パンデミックによる人口減少や町の消滅などが起こり、たびたび世界の歴史を変えるほどの影響を及ぼしてきています。19世紀後半以降の病原微生物の発見やワクチン開発などの医学研究成果により、予防から治療に至るまでの感染症管理はかなり発展を遂げてきました。しかしながら近代においても、感染症パンデミックは社会において驚異であり続けています。

今回の新型コロナウイルスは人類社会全体に影響を及ぼす新しい病気であり、mRNAワクチンは新しく開発された特効薬だと考えるとワクチンを受ける場合の抵抗感が少なくなるのではと考えています。またすでに接種を開始した国々から出されている接種後の調査研究報告からは接種を勧めても良いワクチンと個人的には判断しています。医療従事者として、また高齢者として個人的にも社会的にも早急にワクチン接種を受けたいと思います。人口の60%以上の方が受けられることを期待してこのコラムを終了します。

金川 修造
MARU By Tokyo Business Clinic 院長
山形大学医学部卒業。
小児科としてキャリアをスタート。
国際医療支援に従事した後、2003年に開設された国立国際医療研究センタートラベルクリニックの立ち上げに関わり、医長として長く海外渡航者の診療にあたった後、現在は東京ビジネスクリニックに勤務。
日本検疫衛生協会理事、日本渡航医学会評議員

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