スパイクタンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質って何?

コロナウイルスは様々な成分で構成されています。今回はその中でもワクチンを作る上で重要なスパイクタンパク質(=Sタンパク質)と、感染を診断をする上で重要なヌクレオカプシドタンパク質(=Nタンパク質)について説明していきたいと思います。

Sタンパク質(スパイクタンパク質)とは?

みなさんがよく目にするコロナウイルスの画像には表面にたくさんのトゲトゲがついているかと思います。これを生物学的にSタンパク質と呼んでいます。

Sタンパク質の主な役割は、ヒトの細胞表面にある受容体と結合して感染を起こすことです。Sタンパク質が受容体と結合することでウイルス本体がヒトの細胞と融合し、コロナウイルスの遺伝子がヒトの細胞内に移行して感染が成立します。

日々騒がれている変異型ウイルスは、いずれもこのSタンパク質を構成するアミノ酸の1つが突然変異を起こして、トゲトゲの構造が少しだけ変わり感染しやすくなったものことを指しています。変異したアミノ酸の種類と番号によって、様々な変異型が存在します。

また現在日本で使用されているファイザー社製およびモデルナ社製のmRNAワクチンは、このSタンパク質のみをヒトの細胞内で人工的に作る遺伝子を利用したワクチンです。ヒトの細胞内で作られた人工Sタンパク質に人体免疫系が強く反応することで、新型コロナウイルスの感染に対する抵抗力(抗体)が獲得できるというわけです。

Nタンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質)とは?

Nタンパク質とは、コロナウイルスの遺伝子を包む殻のことを指します。

Sタンパク質と異なり突然変異などでアミノ酸配列の変化が起こりにくく、またタンパク質自体が大きく判別しやすい構造のため、多くのコロナウイルス抗原検査ではこのNタンパク質を検出するように設計されています。

一方で、Nタンパク質は現在使用されているmRNAワクチンからは人工的に生成することができず、ワクチンとの関連がない部分です。

SとN、違いのまとめ

Sタンパク質(スパイクタンパク質)とは、コロナウイルスのトゲトゲの部分を指し、主にワクチンによる抗体産生の標的としている構造のことです。ワクチン接種後の抗体検査ではこのSタンパク質に対するIgG抗体が上昇します(陽性となります)。

Nタンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質)とは、コロナウイルスの丸い殻の中身を指し、主に抗原検査で標的としている構造のことです。ワクチン接種をしてもNタンパク質に対するIgG抗体は変化しません(陽性となりません)。

ちなみにですが、PCR検査はSタンパク質でもNタンパク質でもなく、その中に納められているRNA遺伝子を標的としている検査のことです。

SとN,2種類のIgG抗体検査

以上の話から分かるように、IgG抗体検査では、Sタンパク質とNタンパク質のどちらを調べているかで、検査の意味合いが大きく異なってきます。

新型コロナウイルスに感染した人にはSタンパク質とNタンパク質の両方に対するIgG抗体が獲得されますが、ワクチンで抗体を獲得した人はSタンパク質のみ抗体が獲得されます。

今後は、ワクチンを打った後に、ワクチンによりIgG抗体が獲得できたかどうかを調べたいというケースが出てくるかと思いますが、その際にはSタンパク質に対するIgG抗体検査をするようにして下さい。

逆に、過去にコロナウイルスに感染したことがあるかどうかを調べたい場合には、Nタンパク質に対するIgG抗体検査を実施すれば、ワクチン接種に関わらず過去の感染の有無を確認することができます。

ワクチンを打った後に行った抗体検査で陰性になってしまった場合、Nタンパク質にのみ反応するIgG抗体検査を実施している可能性がないかどうか、確認が必要です(ワクチンでSタンパク質IgG抗体が上がっていても、過去に感染したことがなければNタンパク質IgG抗体は陰性となります)。

免疫と抗体価については以下のコラムで詳しく解説しております。

当院でのワクチン接種後のSタンパクIgG抗体検査

Sタンパク質とNタンパク質の違い、またワクチンによる抗体検査と診断に使用する抗原検査のそれぞれの特徴について、ご理解頂けましたでしょうか。

最後に、当院ではコロナワクチン接種後にSタンパク質に対するIgG抗体を調査しましたので報告します。職員6名と小規模ですが、ワクチン接種後に本当にSタンパク質IgG抗体が上昇するのかどうかを調べた調査です。

結果としては、以下のグラフから明らかなように、ファイザー社製コロナワクチン(コミナティ)の1回目を接種した2週間後の時点で、被験者6名全員で基準値を大きく超えるレベルの抗体価が確認されています。(掲載日6月12日時点では7wに関しては経過しておらず調査前です。)

2回目接種でさらなるブースト(相乗効果による抗体価の急上昇)が期待されますが、この結果を見る限りでは1回のみの接種でもSタンパク質IgG抗体価は十分に獲得できていることが分かります。

これからの世の中では、PCR検査で現時点で感染していないことを証明することよりも、ワクチン接種証明や接種後の抗体価を証明することで、自分がコロナウイルスに強力に感染しにくい状態であることを示す方が重要になってくることが予想されます。

当院ではSタンパク質に反応する抗体検査を実施しています。

参考資料
NHK 新型コロナウイルス特設サイト
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/newvariant/qa.html
ベックマン・コールター SARS-CoV-2スパイクタンパクの医学的価値
https://www.beckmancoulter.co.jp/dx/COVID-19/spike_protein/
コスモ・バイオ株式会社 SARS-CoV-2/COVID-19 タンパク質
https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/sars-cov-2-covid-19-antigen-protein-pgi.asp?entry_id=39905
※この記事の内容は2021/06/12時点での情報です。
状況は常に変わっていますので必ずしも最新の情報を掲載しているとは限りません。

内藤 祥
医療法人社団クリノヴェイション 理事長
専門は総合診療
離島で唯一の医師として働いた経験を元に2016年に東京ビジネスクリニックを開院。
日本渡航医学会 専門医療職

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